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充電式電池の発明:2019年ノーベル賞受賞者 吉野彰博士へのインタビュー

2020年9月

Tomoki Sawai (WIPO 日本事務所)

2019年ノーベル化学賞受賞者 吉野彰博士(上)商業
的に実現可能なリチウムイオン電池を開発した。
(写真: WIPO 日本事務所提供)

2019年、吉野彰博士、Stanley Whittingham博士、John Goodenough博士は、携帯機器への電力供給に使用する小型エネルギーシステムであるリチウムイオン電池の開発を推進した功績により、ノーベル化学賞を受賞しました。これらの軽量な充電式電池は、携帯電子機器のブームに拍車をかけ、長距離電気自動車の開発と再生可能エネルギー源によるエネルギーの効率的な貯蔵を可能にすることで、すでに環境上の利益を生み出しています。

吉野博士は、世界初のリチウムイオン電池を発明し、特許を取得して以来、技術の向上に継続的に取り組んできました。彼は自身のキャリアを通じて、リチウムイオン電池技術に関して60件以上の特許を取得しています。吉野博士が、リチウムイオン電池の開発で克服した課題と、特許権の戦略的使用が彼らにとって活況を呈する世界市場の構築において果たした役割について語ります。

化学を始めたきっかけは何ですか?

私はいつも自然界に興味を持っていました。そして、私が小学生のとき、教師の一人がマイケル・ファラデーの 『The Chemical History of a Candle(ロウソクの科学)』を読むように勧めてくれました。そして、私は多くの疑問を持つようになりました。それまで化学には興味がありませんでした。それがすべての始まりでした。その後、京都大学で量子有機化学を専攻しました。

どのようにしてリチウムイオン電池の開発に取り組むようになったのですか?

1970年代初頭、旭化成株式会社の研究開発部に所属し、新しい汎用材料を研究しました。最初に取り組んだプロジェクトがうまくいかなかったため、私は新しい研究テーマを探していました。当時、日本初のノーベル化学賞受賞者である福井謙一博士が予測し、2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士が発見した魅力的な導電性高分子であるポリアセチレンに大きな関心が寄せられていました。

最初に、私はポリアセチレンの実用的な適用を研究しました。しかし当時、日本のエレクトロニクス業界は、開発中の携帯機器に電力を供給するための新しい軽量でコンパクトな充電式バッテリーを探していました。多くの研究者がこれに取り組んでいましたが、既存の電極材料は不安定で、深刻な安全上の懸念がありました。そこで、新しい電極材料を必要としていました。ポリアセチレンに関する私の研究で、(リチウムのようなイオンが出入りするため)電極材料として使用できることが証明されたため、実験を開始し、それが成功しました。

福井教授がノーベル化学賞を受賞した1981年に、私はリチウムイオン電池の基礎研究を本格的に開始しました。興味深いことに、リチウムイオン電池の研究は、8人のノーベル賞受賞者によって行われており、開発がいかに困難であったかを示しています。

1983年までに、負極にポリアセチレン、正極にコバルト酸リチウムを組み合わせた新しいタイプの二次電池を思いつきました。私の仲間で受賞者の1人であるJohn Goodenough博士は、1980年にリチウムイオンを含む最初の電極材料であるコバルト酸リチウムを特定しました。

この画期的な進歩の後、あなたの研究はどのように進化しましたか?

しばらくの間、すべてうまくいきました。試作品は標準のニッケルカドミウム電池より3分の1軽量で、優良でしたが、わずかな軽量化しかできず、電池のサイズを小さくすることはできませんでした。小型化はエレクトロニクス業界の優先事項であったため、これはベンチャー全体に疑問を投げかけました。

問題は、ポリアセチレンの相対密度が小さいことでした。これにより、軽量にはなりましたが、電池が分厚く、大きくなりすぎて実用的ではありませんでした。そこで、私たちはポリアセチレンのような特性を持つ高密度材料を探し始めました。炭素材料(相対密度が約2.2で、ポリアセチレンと同じ共役二重結合でできている)を使用するというアイデアでした。しかし、適切な炭素材料が存在せず、それは非常に残念でした。

リチウムイオン電池は、今日のモバイルIT社会を現実のものにしました。そして将来的には、持続可能な社会を構築する上で中心的な役割を果たすでしょう。

しかし、答えは旭化成の社内からもたらされました。別の研究チームが、気相成長炭素繊維(Vapor-phase Grown Carbon Fiber 、VGCF)として知られる、独特の結晶構造を持つ新しい炭素材料を開発しました。これは、ポリアセチレンの優れた代替品になりました。私はなんとか材料のサンプルを手に入れました。そして、案の定、それを負極の作成に使用することで、私たちは小型軽量な電池を作ることに成功しました。

小型化の重要性をどのようにして知りましたか?

私たちは旭化成の電池専門家ではなかったので、業界が何を必要としているかについての社内の議論はあまり意味がありませんでした。そしてもちろん、電池の製造業者に行って、彼らの企業秘密である初期段階の研究を教えてもらうことなど期待できませんでした。しかし、電池会社の幹部であった旭化成の役員である元同級生に会った際、彼が小型化の重要性について教えてくれました。スマートフォンメーカーは狭いスロットに収まる電池を必要としていました。

私にとって、この経験によりさまざまな分野の人々が集まってアイデアを話し合い、交換することがいかに重要であるかが明確になりました。 このような連携は、技術開発を促進し、新技術を普及し、取り込む上で非常に重要です。

旭化成が材料科学を全体的に重視したことは、リチウムイオン電池の開発に有利でしたか?

当初の計画は新しいポリアセチレンベースの材料を開発することでしたが、研究が進むにつれて、カソード、電解質、セパレーターなどに使用できる様々な新しい材料が業界で必要とされていることがわかりました。単に新しいアノードを作ることに集中するのではなく、電池の全体的なイメージが浮かび上がりました。旭化成は、新素材を研究しているという理由だけで電池分野に参入しましたが、専門家ではなかったためにリチウムイオン電池を開発することができました。

私が電池メーカーの研究者だったら、おそらくポリアセチレンやVGCFに出会うことはなかったでしょう。結局、新素材とそれを開発する自由が新製品のきっかけとなりました。

1985年、吉野博士は最初の充電式リチウムイオン電池(コバルト酸リチウムと炭素ベースの負極を使用)の特許 (JP 1989293) を申請し、スマートフォン、ノートブック、ラップトップなどの携帯電子機器の世界的な普及と使用への道を開拓しました。(写真: 旭化成株式会社提供)

リチウムイオン電池の影響について教えてください。

リチウムイオン電池は、今日のモバイルIT社会を現実のものにしました。そして将来的には、持続可能な社会を構築する上で中心的な役割を果たすでしょう。電気を蓄えることができる充電式バッテリーは、環境問題を解決するための重要なデバイスです。これは、電気自動車が登場した2010年頃に広く認識されるようになりました。それは日産リーフが発売された年でした。それは本当に画期的な進歩でした。それ以降、電気自動車の電力供給にはリチウムイオン電池が使用されました。それ以来、リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上(つまり、1回の充電でどこまで行けるか)と費用の削減において、多くの進歩が見られました。しかし、耐久性(バッテリーの寿命)に関する問題はまだ克服する必要があります。

リチウムイオン電池だけではすべての環境問題を解決できるわけではありませんが、人工知能(AI)やモノのインターネットなど、他の新しいイノベーションと組み合わせると、持続可能な社会を構築する上で中心的な役割を果たすことができるでしょう。

複数の特許を保有していらっしゃいますが、特許制度についてどのようにお考えですか?

特許法の基本的な精神は、すべての人の利益のために技術開発を奨励することです。独占的な特許権を取得する見返りに、あなたは新しい技術を世界に公開[開示]し、それによってその広範な普及を支援します。 それがリチウムイオン電池で起こったことです。

旭化成は電池技術の開発は得意でしたが、電池の専門家ではなかったため、この技術を中心にどのような事業を立ち上げるかを決めなければなりませんでした。多くの議論の末、私たちは次のことを決定しました。a)適切なパートナー(東芝)と協力して電池事業を確立する。 b)他の電池関連材料を旭化成の既存事業に統合する。 c)リチウムイオン電池技術の積極的なライセンス供与を行う。

ライセンスプログラムにより、リチウムイオン電池技術が多くの新しいメーカーに公開され、費用、信頼性、安全性の面で技術を向上させることができました。また、テクノロジーの普及、消費者の信頼の強化、企業のライセンス収入の創出にも役立ちました。誰もがテクノロジーにすばやくアクセスし、その恩恵を受けることができます。それが発明の本質です。

知的財産制度をどのように改善する必要があると思いますか?

今日のグローバル化した世界では、特許に対して独占的な特許権を行使することが困難になっています。模倣しないように言ったところで、模倣されます!さらに、特許権には期限があるため、ライセンス供与だけでその経済的価値を活用することは非常に困難です。見返りや経済的利益を得るために他の方法を考えることが重要だと思います。たとえば、技術が最終製品ではなくサービスとして商品化され、ダウンストリームの支払いを受け取るリチウムイオン電池を中心とした事業モデルの開発などが挙げられます。Google、Apple、Facebook、Amazonなどのプラットフォームはこのモデルを使用しています。それはより多くの収益を産み出します。これらの企業はプラットフォームの設計に成功し、テクノロジーベースのサービスのための市場を拡大する国際基準を確立することに成功しました。無料で提供されるものもあります。たとえば、Googleは、Androidユーザーコミュニティを拡大するために、スマートフォン向けのOS Androidシステムを無料で提供しています。ここでは、スマートフォンビジネスの価値は、電話そのものからではなく、その使用からもたらされていることがわかります。このビジネスモデルはITの世界では一般的であり、未来のビジネスパターンになる可能性があります。

吉野博士は、正極にコバルト酸リチウム(受賞者のJohn Goodenough博士が発見)を使用し、負極にはリチウムイオンを挿入できる炭素ベースの材料(気相成長炭素繊維)を使用しました。電池の機能は、電極間のリチウムイオンの往復の流れに基づいており、電池の寿命を延長します。

特許制度は、2019年のノーベル化学賞の受賞に役立ちましたか?

産業界の研究者は、結果を発表する方法が学術研究者とは異なります。 学術研究者は自分の研究を発表しますが、産業研究者の研究は特許文献に埋め込まれています。これは理解が難しく、最近まで学術界では好意的に評価されていませんでした。

しかし、ノーベル賞委員会の引用では、私が1985年に作成して特許を取得したリチウムイオン電池の試作品について特に言及されていました。したがって、それは重要な要素であったようです。独立機関からの支持も一役買ったようです。私は、リチウムイオン電池の最初の特許を取得したことで、欧州特許庁の欧州発明家賞を受賞しました。その特許に対する欧州特許庁からの承認は、この賞の審査の議論において重要な要素となったようです。

好奇心を持ち、今世紀に記念となるような大きな発見と画期的な発明を行うためのスキル、自信、知識を身に付けることにあなたのエネルギーを使ってください、というのが私から若い人たちへのアドバイスです。

一般的に、ノーベル賞に関しては、私が敬意を示している特許審査官たちだけが特許出願で概説されている技術を理解できるため、産業研究者は不利な立場にいると思います。したがって、産業研究者がノーベル賞の対象となることを望むのであれば、事前に大きな賞を受賞する必要があるでしょう。

若い科学者にメッセージをお願いします。

新しい挑戦に取り組むための時間枠は、特定の年齢に制限されています。およそ35歳。それが代々のノーベル賞受賞者が研究を始めた年齢です。私は33歳でリチウムイオン電池の基礎研究を始めました。その年齢になれば、あなたは企業や社会の働きを理解し、新しいベンチャーを始める自信と権威を持つことができるでしょう。失敗した場合でも、他の何かを始める時間もあります。

日本が将来ノーベル賞を受賞することができるかどうかは、35歳前後の人々が現在どのような環境で働いているか、そして彼らが自分の考え方に従い、ノーベル賞に値する画期的な成果につながる研究に取り組む自由があるかどうかによって決まると思います。

吉野博士(中央)は旭化成の名誉会員であり、リチウム電池技術評価センター(LIBTEC)の所長です。(写真: 旭化成株式会社提供)

未来の科学者になりたいと願う若者たちに何かアドバイスはありますか?

今日、若者は必要な情報に簡単にアクセスできますが、多くの人は、彼らが解明すべき新しい大きな発明や発見はないと感じています。しかし、それは間違っています。生命や自然について、私たちが理解していないことがまだたくさんあり、発掘すべき多くの宝物があります。

好奇心を持ち、今世紀の記念となるような大きな発見と画期的な発明を行うためのスキル、自信、知識を身に付けることにあなたのエネルギーを使ってください、というのが私から若い人たちへのアドバイスです。まだ解明されていないことがたくさんあります。勉強を通してあなたの未来に投資してください。35歳の自分とその時にあなたが取り組んでいることを想像してみてください。

原則として、私は子供たちに学習を強要することを信じていません。私たちは、彼らが自分で考え、自分の道を決めることができるようにする必要があります。それが最善策だと思います。

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