2024年、特許・商標・意匠に関するWIPO国際登録制度の利用が増加
ジュネーブ ,
2025/03/17
PR/2025/934
世界知的所有権機関 (WIPO) 所管の知的財産に関する国際登録制度の利用は、2024年、海外市場で製品を保護し展開するための企業や個人による利用が増加したことで、特許・商標・意匠の全てにおいて成長を記録しました。
2024年、WIPOのハーグ制度 (国際意匠制度) を利用した出願に含まれる意匠件数は6.8%増加し、特許協力条約 (国際特許制度) を利用した国際特許出願の件数は0.5%の増加でした。また、2年連続で減少していたWIPOの国際商標登録に関するマドリッド制度 (国際商標制度) による商標出願の件数は1.2%増加しました。
WIPOは、民間部門に直接サービスを提供しているという点で、国連機関の中でもユニークな存在です。知的財産に関するWIPOの国際登録制度は、世界中の革新的な個人や企業が国境を越えて知的財産を広め、新たな市場へ進出することを支援します。WIPOのサービスに対する需要が高まる中、今後もユーザー中心の効率的なサービスを提供し続け、世界中のイノベーターにさらなる価値をもたらしていきます。
ダレン・タン (Daren Tang) WIPO事務局長
国際特許制度 (特許協力条約 – PCT)
PCT上位出願人・出願国
2024年、PCT出願件数は合計273,900件に達し、2023年比で0.5%増加しました。中国が引き続きトップを維持し、出願件数は70,160件でした。中国に続いて、米国 (54,087件) 、日本 (48,397件) 、韓国 (23,851件) 、ドイツ (16,721件) の順となりました (附属書1 ) 。中国の出願件数が増加 (+0.9%) に転じた一方で、米国、日本およびドイツではそれぞれ2.8%、1.2%、1.3%減少しました。米国については3年連続、ドイツおよび日本については2年連続の減少となりました。これに対し、韓国では7.1%の大幅増となり、27年連続で増加を記録しました。
2024年のPCT出願公開件数については、中国のファーウェイ・テクノロジーズ (Huawei Technologies) が6,600件で首位を維持し、次いで、韓国のサムスン電子 (Samsung Electronics、4,640件) 、米国のクアルコム (Qualcomm、3,848件) 、韓国のLGエレクトロニクス (LG Electronics、2,083件) 、中国の寧徳時代新能源科技 (Contemporary Amperex Technology、1,993件) の順となりました (附属書2 ) 。出願人トップ100の中では、日本、中国および米国の出願人が最も多く、それぞれ35社、21社および19社でした。
上位10の出願人のうち、サムスン電子の出願件数の伸びが最も大きく、2024年に公開された出願の件数は716件増加しました。一方、日本の三菱電機の出願件数は2023年比で196件の減少となりました。トップ10以外では、米国のテクノロジー大手のApple (441件増加) およびGoogle (335件増加) がともにトップ20に入りました。出願人トップ20はさまざまな業種で構成されるものの、そのうち少なくとも8社は、携帯電話および電気通信の分野において事業を展開しています。
教育部門では、2024年もカリフォルニア大学 (米国) が首位の座を維持し、PCT出願公開件数は519件でした。テキサス大学システム (米国) が216件で2位につけ、次いで、清華大学 (中国、188件) 、浙江大学 (中国、175件) 、ソウル大学校 (韓国、170件) の順となりました (附属書3 ) 。
上位の技術分野
2024年に公開されたPCT出願では、デジタル通信分野が全体の10.5%を占め、首位になりました。2019年以来トップだったコンピュータ技術の件数を上回る結果となりました。その他の主な分野としては、コンピュータ技術 (9.7%) 、電気機械 (8.6%) 、医療技術 (6.5%) および測定 (4.4%) が挙げられます (附属書4 ) 。これら5分野の合計で、全PCT出願公開件数の約40%を占め、2019年比で5ポイント増加しました。上位10の技術分野のうち、2024年に最も大きく伸びたのはデジタル通信 (+9.9%) および電気機械 (+7.9%) でした。
国際商標制度 (マドリッド制度)
マドリッド制度の上位出願人・出願国
WIPOのマドリッド制度を利用した国際商標出願は、2年連続で減少していましたが、2024年には増加に転じ合計65,000件となり、2023年比で1.2%増加しました。国別では、国際商標出願を最も多く行ったのは米国の出願人 (11,270件) で、次いで、ドイツ (6,449件) 、中国 (5,828件) 、フランス (4,211件) 、英国 (3,736件) の順となりました (附属書5 ) 。
上位10の出願国のうち、2024年に国際商標出願件数が伸びたのは6ヵ国で、韓国 (+12.1%) の伸び率が最も高く、次いで、中国 (+6.3%) 、スイス (+6.1%) 、日本 (+6.1%) 、イタリア (+5.7%) 、米国 (+2.5%) の順となりました。
2024年、フランスのロレアル (L'Oréal) が4年連続で首位を維持し、マドリッド商標出願件数は244件でした。ロレアルに次いで、スイスのノバルティス (Novartis AG) が順位を2つ上げて、出願件数193件で2位につけました。これに続き、上位5社にはブルガリアのEuro Games Technology社 (141件) 、日本の資生堂 (124件) 、ドイツのベーリンガーインゲルハイム (Boehringer Ingelheim International GmbH、106件) が入りました。
2023年から2024年にかけて、幾つかの企業のマドリッド商標出願件数が大きく伸びました。特に、製薬大手のノバルティスの出願件数は83件増加しました。そのほか、米国の自動車部品小売業オライリー・オートモティブ (O'Reilly Automotive Stores、+76件) 、韓国の美容・化粧品メーカーのアモーレパシフィック (Amorepacific Corporation、+65件) 、中国の電気自動車メーカーBYD (+60件) も大幅に増加しました (附属書6 ) 。
上位の分類
WIPOが受理した国際出願のうち最も多く指定された分類は、コンピュータハードウェア・ソフトウェアおよびその他の電気電子機器であり、2024年の合計の10.8%を占めました。次いで、事業向けサービス (8.4%) 、科学的・技術的サービス (7.8%) の順となりました。
国際意匠制度 (ハーグ制度)
ハーグ制度の上位出願人・出願国
2024年、意匠の国際保護に関するWIPOのハーグ制度を利用した出願件数は過去最多を記録し、27,161意匠となりました。これは前年比で6.8%増にあたり、ハーグ制度の利用は4年連続で増加しました。2024年、中国が出願件数でトップとなり、意匠数は4,870件、次いで、ドイツ (4,218件) 、米国 (3,034件) 、イタリア (2,249件) 、スイス (2,109件) の順となりました (附属書7 ) 。2024年には上位10ヵ国のうち5ヵ国において2桁成長を記録し、中国がトップで29.6%増、次いで、イタリア (+23.8%) 、オランダ (+17.4%) 、韓国 (+16.8%) 、米国 (+13.3%) となっています。中国における全体的な件数増は、ファーウェイ・テクノロジーズによる出願の大幅な増加によるところが大きく、2024年に出願された意匠数は2023年比で387件増加しました。
2024年に公表された出願に含まれる意匠数では、米国のプロクター・アンド・ギャンブル (Procter & Gamble) が641件でトップに立ちました。昨年首位であった韓国のサムスン電子は、2024年の意匠件数が118件減って合計426件となり、順位を6位に下げました。その他の上位出願人としては、ドイツのポルシェ (Porsche AG) が意匠数にして506件、韓国のLGエレクトロニクスが459件、イタリアのフェラーリ (Ferrari SPA) が442件、中国のファーウェイ・テクノロジーズが431件を記録しました (附属書8 ) 。自動車メーカー4社—フェラーリ、ポルシェ、ドイツのフォルクスワーゲン (Volkswagen) 、フランスのステランティス (Stellantis Auto) —が出願人トップ10にランクインしました。
上位の分野
2024年の意匠の合計のうち最大シェアを占めたのは、記録・通信機器 (12.3%) で、僅差で輸送手段 (11.1%) が続き、次いで、パッケージ・容器 (7.9%) 、家具 (7.6%) 、家庭用品 (5%) の順となりました。
裁判外紛争処理手続 (ADR)
本年の初頭に公表された報告結果によれば、WIPO仲裁調停センター (WIPO AMC) は2024年、858件の知財・イノベーション・技術関連の紛争解決に関与しました。これは2023年比で25%増でした。また、統一ドメイン名紛争処理方針 (UDRP) および国別のccTLDが採用する処理方針に基づき133ヵ国に所在する商標名義人から6,168件の申立てがありました。
WIPOについて
世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中のイノベーターやクリエイターにサービスを提供し、アイデアの確実な市場投入を通じてあらゆる場所における生活の向上実現を支援する国連機関です。
WIPOは、知的財産 (IP) の国境を越えた保護と展開を目指すクリエイターやイノベーターまた起業家たちを支援するサービスを提供し、また知的財産に関する最先端の課題解決に取り組むためのフォーラムとして機能します。WIPOが発表する知的財産データと情報は世界中の意思決定者により参照されます。またそのインパクト重視のプロジェクトや技術支援を通じて、あらゆる場所のすべての人が知的財産の利益を受けられるように支援します。
詳しくはWIPO Media Relations Sectionにお問い合わせください。- 電話: (+41 22) 338 81 61 / 338 72 24
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