再利用可能ロケット、自律走行型自動車、スマートシップ : 発明による輸送産業の変革が進む、WIPOの最新報告書が公表
ジュネーブ,
2025/02/06
PR/2025/933
WIPOの最新報告書によると、世界の輸送分野におけるイノベーションでは、エアタクシー、電気自動車用ワイヤレス充電、自動操縦貨物船などの環境により優しい未来型技術にますます注目が集まっており、発明活動では中国、日本、米国、韓国、ドイツがリードしています。
また、内燃機関やその他の化石燃料ベースのシステム等の従来の製品に関する特許活動については伸び率が横ばいであることも報告されています。
『WIPO Technology Trends: Future of Transportation (WIPOテクノロジートレンド: 輸送の未来)』 報告書では、2000年以降に公開された特許出願から、輸送の未来、すなわちグリーン燃料やスマートな相互接続輸送システムなど、持続可能性やデジタル化のメガトレンドに関わる技術に関連する110万件以上の発明が特定されています。
2023年までの年平均成長率 (CAGR) は11%で、これは世界で公開された特許出願全体の成長率の2倍以上です。輸送分野は多くの国でGDPの6〜12%、さらにエネルギー関連の毎年のCO2総排出量の約23%を占め、この分野の重要性を浮き彫りにしています。
特許出願が最も伸びている分野は、人やモノをよりクリーンで気候変動に対応した方法で移動させる取り組みの一環として開発された、電気自動車用電池や水素燃料電池のような持続可能な動力源関連のものです。
本報告書は、政策立案者、事業者、研究者、その他の人々に対して、投資の指針を示し、イノベーション戦略を策定し、協力を促すための重要な洞察を提供することを目的としています。また、特許出願に含まれる発明の商業化をどのように促進すれば、より効果的に世界中の市場に製品を展開し、人々の生活を向上させるインパクトを生み出すことができるのかについても考察しています。
本報告書は、最先端の研究と実用化の架け橋となるものです。世界各国がネット・ゼロ・エミッション (二酸化炭素排出量実質ゼロ) の達成と新たなコネクティビティの構築に取り組むなか、輸送の未来は私たちすべてに大きな影響を与えるでしょう。このきわめて重要な岐路において、私たちは大胆な発想と協力的な行動によって、輸送業界の変革を目指すこれらの偉大な発明の商業化を促進する政策、基準、規制を形づくる必要があります。
ダレン・タンWIPO事務局長
本報告書について
『WIPOテクノロジートレンド』 報告書のシリーズ第3弾となる本報告書は、電気自動車や自律走行車からスマートインフラ、デジタルロジスティクスに至るまで、輸送分野に待ち受けるエキサイティングな可能性に光を当てています。最新の輸送技術の特許動向を調査することで、技術革新が最も進んでいる国、企業、機関を明らかにしています。
本報告書は、従来の特許調査とAIによるトピック抽出を組み合わせたデータ駆動型のアプローチに基づき作成されました。特許、科学論文、プレスリリース、最高経営責任者 (CEO) の声明を分析し、輸送分野の最新動向とトレンドを収集しました。本報告書は、陸、海、空、宇宙という4つの主要な輸送形態と、持続可能性とデジタル化という2つの包括的なメガトレンドに基づいて構成されています。主な調査結果には以下が含まれます。
- 輸送の未来 (Future of Transportation) に関連する特許は、2003年の発明件数15,000件から2023年には120,000件へと、過去20年間で700%増加している。
- 輸送の未来に関連する特許が全輸送関連特許に占める割合は、2003年には16%に過ぎなかったが、現在は40%に達している。
- 2018年以降、イノベーターがより新しく環境に優しい製品やプロセスに向かうなかで、従来の技術に関する世界的な特許出願件数の伸びは横ばいとなっている。
- 陸上輸送に関する特許出願が圧倒的に多く、海上輸送、航空輸送、宇宙輸送を合わせた発明件数の3.5倍を超える。
- 陸上輸送は、輸送分野において最大のモダリティ (手段) である。2000年以降、陸上輸送分野における発明は90万6,000件以上にのぼる (輸送の未来に関連すると特定された発明全体の82%)。
- 2000 年以降、航空輸送は約 132,000 件の発明があり、特許出願件数で第 2 位の輸送手段である。宇宙輸送技術と海上輸送技術の特許出願件数ははるかに少なく、特許ファミリー公開件数は、それぞれ約75,000件と47,000件である。
- 発明活動が最も集中しているのは、中国、日本、米国、韓国、ドイツで、輸送の未来に関連する特許の約90%を占めている。
- これら5か国を合わせると、2000年以降、未来の輸送技術に関する発明は105万件近くにのぼる。
- 最近の電気自動車 (EV) 市場における支配力を踏まえると、中国の成長は力強い。しかし近年の成長は、スウェーデン、イタリア、インド、カナダなど、特許出願に関する絶対数が相対的に低い他の国々でも力強い。
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