江蘇省都市サッカーリーグ (JSCL) 、別称「スー・スーパーリーグ」、中国語で「蘇超 (スーチャオ) 」として知られるこのリーグは、驚異的な人気を博しています。当初はアマチュア選手たちが小さな競技場でプレーする地味なローカル競技にすぎませんでしたが、今では中国東部各地のスタジアムを満員にするほどの人気競技となっています。。
蘇超 (スーチャオ) の試合に関する投稿は、Weibo (微博 : ウェイボー) で数百万回、中国の大手ショート動画プラットフォームのDouyin (抖音 : ドウイン) では数十億回の再生回数を記録していると報じられています。
その人気の背景にある重要な要因の一つは、幅広い市民参加にあると、江蘇省サッカー協会のWang Xiaowan副会長が新華社通信に語っています。
その市民参加はピッチの内外で起こっています。この草の根のサッカー大会には全13チームが参加しており、各チームは江蘇省内のそれぞれの都市名にちなんで名付けられています。江蘇省は、豊かな長江デルタ地域に位置し、南は上海と隣接しています。
スー・スーパーリーグでプレーする選手の60%以上は、普段はさまざまな職業や学業に就くアマチュア選手です。学生、配達員、教師らがピッチに立ち、週の残りの日々はそれぞれ通常の仕事や学業の場に戻って過ごしています。
江蘇省の観光部門やクリエイターたちは、この熱狂に着目し、リーグの宣伝としてショート動画、アニメーション、AI生成コンテンツを活用し、方言や食文化、地域の伝統を織り交ぜたストーリーを展開しています。
スー・スーパーリーグは、ユーザー生成コンテンツ (UGC) やAI生成コンテンツ (AIGC) に対して比較的オープンな姿勢をとっており、ファンが作成したミーム、リミックス、解説、地元にインスピレーションを得たナラティブ (物語) などが、オンライン上で広く拡散されることを認めています。
メディア報道 によると、同リーグはUGCや各都市にまつわるユーモアを人気の中心に据えることで、瞬く間に世間の注目を集めたとされています。
ハーフタイム中に恐竜の大群が観客を楽しませるといったライブパフォーマンスは、スタジアムへの集客力をさらに高め、ネット上での話題性をさらに広めています。
しかし、スー・スーパーリーグの魅力が省外へと広がり、江蘇省の各都市のアイデンティティを強化し、商業的な可能性を高めていくにつれ、知的財産権 (IP) に関する新たな疑問も生じています。
知的財産権 (IP) を通じて江蘇省都市サッカーリーグを守る
地域を基盤とするアマチュアサッカー競技として始まったこのリーグは、急速にブランド価値、商業的機会、文化的影響力を高めています。一方で、スー・スーパーリーグのIP体制はまだその盛り上がりについていけていません。
注目度の高まりとともに、企業や市場関係者が続々と参加してきています。こうした状況を踏まえ、2025年5月、江蘇省サッカー協会は、競技名称、イベント識別子、マスコットといった主要カテゴリーを対象とする20件の商標登録を出願しました。6月には、同社は2回目の出願を行い、保護対象を競技名だけでなく、潜在的な関連商品にまで拡大させました。
本稿執筆時点で、中国国家知識産権局 (CNIPA) の商標データベースによると、「江苏省城市足球联赛 JIANGSU FOOTBALL CITY LEAGUE」(江蘇省都市サッカーリーグ) や「JSCL」といった主要な競技名称については、江蘇省サッカー協会によって商標登録の出願が行われています。
公開記録によると、「JSCL」商標の最初の出願は2025年5月に行われており、出願人は江蘇省サッカー協会となっています。その他の関連商標の出願は現在審査中です。
スー・スーパーリーグ関連グッズ
同時に、「スー・スーパーリーグ」というキーワードに関連する300件以上の商標出願が行われており、同リーグをめぐる商標出願活動が活発に行われていることがうかがえます。これにより、多くの企業が関連グッズや文化商品の開発に意欲を示しています。
その一例が、無錫 (ウーシー) 市で発売された『サッカーの紫の夢』です。これは、宜興 (イーシン) 市の紫砂工芸とサッカーのイメージを融合させた商品で、夢の追求を象徴する紫砂製のトロフィーという形をとっています。
この商品は、宜興知的財産迅速保護センターの支援を受け、中国国家知識産権局 (CNIPA) からわずか5営業日で意匠特許が認められました。
中国における「ぬいぐるみギフトの首都」である揚州 (ヤンジョウ) 市も、スー・スーパーリーグ人気が高まるなか、知的財産の収益化においても高い能力を発揮しています。
江蘇省の無形文化遺産を広く知らしめる
企業のなかには、スー・スーパーリーグをテーマにした玩具の初期デザインを完成させた後、速やかに著作権登録を行い、独自の知的財産ポートフォリオを構築しているところもあります。
同時に、揚州市政府も各種政策を通じて、この産業の高度化を支援しています。早くも2025年4月には、独自IPの育成を積極的に推進し、無形文化遺産の要素をデザインに取り入れることを奨励し、文化・観光分野との融合を促進する諸措置が導入されました。これにより、政策支援、イノベーション、市場拡大のあらゆる面で相乗効果も生まれています。
したがって、スー・スーパーリーグをめぐる知的財産権の問題は、機会と課題の両方を浮き彫りにしています。それらは、スポーツイベントがいかに迅速にブランド価値を生み出すことができるかを示すと同時に、一時的な人気を永続的な資産に変えるには、たとえ草の根のスポーツであっても、首尾一貫した知的財産戦略が不可欠であることも示しています。
では、スー・スーパーリーグを一時的流行の競技から、永続的な都市型スポーツ・文化ブランドへと発展させるためには、どのような知的財産の柱が必要となるのでしょうか。
商標を通じてスー・スーパーリーグのブランドをプロモーションする
あらゆるスポーツイベントにおいて、名称、ロゴ、スローガンはブランドアイデンティティの中核をなしています。スー・スーパーリーグの場合、リーグ名、競技ロゴ、チーム名、エンブレムは、保護すべき最も重要な資産に含まれます。
人気の高まりとともに広く浸透したスローガンのなかには、「試合が第一、友情は十四番目」といった遊び心のあるフレーズのように、このリーグの新たな文化の一部となっているものもあります。
こうした表現が広く一般に認知され続ければ、商標としての可能性を広げ、リーグブランドの貴重な要素となるでしょう。将来的には、ライセンス提携や商品化の機会を後押しすることにもつながるはずです。
江蘇省の郷土料理を地理的表示 (GI) によって保護する
スー・スーパーリーグの魅力の多くは、江蘇省の各都市が持つ独自のアイデンティティから生まれています。南京塩鴨、蘇州の陽澄湖毛蟹、鎮江酢といった産品は、有名な郷土の特産品であるだけでなく、地域文化の象徴でもあります。
こうした地理的表示 (GI) 産品をスー・スーパーリーグのプロモーションや商品化と結びつけることで、同リーグの文化的アイデンティティを強化するとともに、地域ブランドにとって新たな市場機会を開拓することにもなるでしょう。
JSCLのスポーツイノベーションを特許によって保護する
スー・スーパーリーグの商業化が進むにつれ、グッズのデザイン、スマートチケットシステム、スタジアム運営、放送技術に関するイノベーションには、意匠特許やその他の技術的保護手段が関わる可能性があります。
デジタル配信や没入型の観戦体験がますます重要視される時代において、技術やデザインに関連する知的財産権は、スポーツイベントにおける競争力の新たな側面を生み出しています。
スー・スーパーリーグのクリエイティブコンテンツを著作権によって保護する
スー・スーパーリーグの影響力は、試合だけにとどまりません。そのトーナメント戦をめぐっては、都市をテーマにしたポスター、プロモーション動画、ソーシャルメディア向けのショート動画、ライブ中継映像、写真など、幅広いクリエイティブコンテンツが生み出されています。
スー・スーパーリーグを永続的なスポーツブランドとして築き上げる
同時に、地元メディアや公式アカウントは、マスコットやアニメキャラクター、クリエイティブな動画を通じてファンとのかかわりを深めてきました。コンテンツの制作と配信の規模が拡大するにつれ、著作権、ライセンス契約、コンテンツ共有、収益配分といった問題がますます重要になってくるでしょう。
蘇超 (スーチャオ) のような都市を基盤とするサッカーリーグにとって、効果的な知的財産戦略とは、単に商標、著作権、特許を個別に管理するだけで済むものではありません。むしろ、これらの異なる保護手段を相互に連携するシステムに統合し、地域のスポーツイベントを一時的なバズ現象から長期的なブランドへと発展させる必要があります。
著者について
Ying Ye (イン・イェ) 氏は、英国のダラム大学ロースクールで博士号を取得。専門はAIと知的財産法をはじめ、テクノロジー法および政策。中国で知的財産権弁護士として活動しており、北京恵成法律事務所 (成都) に所属。長年培った人脈のおかげで頻繁に南京を訪れ、スー・スーパーリーグの熱狂を肌で感じる常連観戦者の一人でもある。