音楽特集: AI、クリエイターの権利と知財開発についての考察

著者: Nora Manthey (WIPOマガジン編集者)

2025/07/09

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音楽と知的財産の進歩はとどまることがありません。世界知的財産の日 (4月26日) や7月にジュネーブで開催されるWIPO年次総会を通じて、音楽と知的財産の関係は今年の中心的なテーマとなっています。WIPOマガジンでは、このテーマへの関心の高まりを受けて、非常に多岐にわたる関連記事を収録した特別号を刊行しました。PDF版をダウンロードするか、オンラインで閲覧することができます。

WIPOマガジン 音楽特集

今回のWIPOマガジンでは、音楽特集をお届けします。このテーマを取り上げるには絶好のタイミングと言えるでしょう。ストリーミングサービスのロイヤルティ支払額が記録的水準に達する一方で、プラットフォーム上に氾濫するAI生成コンテンツへの対処など、解明すべきことは多数存在します。私たちは、新しいテクノロジーを採用しつつ、創造性やイノベーションが損なわれないようにバランスを保つという、非常に困難な課題に対処しなければなりません。

こうした事情もあって、音楽関連の刊行物で展開される多くの議論の根底にはAIの存在があるのです。ちょうど2000年代の初頭におけるファイル共有が業界の混乱をもたらしたのと同様に、AI音楽についても多面的な対処が求められています。そして、音楽業界が「Napster (音源ファイルをやり取りできる共有システム) の衝撃」を再び経験しているのかもしれないという疑問のほとんどは、AI音楽に起因するものなのです。音楽を生成するAIシステムを巡る問題に加え、逆にAIシステムを活用することで、公正なロイヤルティを機械的に確保することが容易になるかもしれないという点も、同様に考慮に値するのではないでしょうか。

AIはさておき、WIPOマガジンは、常にグローバルな視野を堅持しています。記事中では、グレナダとカーボベルデのアーティストが知的財産を戦略的に活用していった過程について語っているほか、別の記事では、中国の集団管理アプローチなどさまざまな制度の考察、中東・北アフリカ (MENA) 地域における音楽の記録的な成長、インドにおける伝統楽器の地理的表示の使用について取り上げています。

別の版では、まず、音楽作品の誕生まで著作権法の歴史を遡り、法律において、状況の変化やイノベーションを織り込んで反映できる柔軟性がどのようにして維持されてきたのかを探るゲストエッセイを収録しています。このように多岐にわたる視点を受けて、78ページに及ぶ魅力的な誌面で構成する本号は、ちょっとした「特大号」になりました。しかし、足下において事態が急展開しているという緊急性と、多数の寄稿者から情熱的な協力を頂いた事実に鑑みれば、音楽分野に特化して、本号の刊行に至ったことはごく自然な流れであると考えています。

音楽と知的財産の現状に関して、読者の皆様は、どのような点に最も関心があり、また、懸念を持たれているのでしょうか。皆様がこのWIPOマガジン「音楽特集」を存分にお楽しみいただけることを願ってやみません。皆様からのご意見をお待ちしております。

本記事は自由に共有していただいて差し支えありません。WIPOマガジンのすべてのコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス (表示4.0国際) で提供されており、利用者は誰でも、明示的な許諾を得ることなく、このコンテンツの複製、配布、翻案、翻訳及び公の場での実演を行うことができます。ただし、WIPOが情報源であることを認める表示が付されること及び元の内容に改変を加えた場合はその旨明示することを条件とします。

本年の夏には、ジュネーブのWIPO本部にて、印刷版での提供も行います。

それでは、本特集号を心ゆくまでお楽しみください。

免責事項: WIPOマガジンは、知的財産及びWIPOの活動に関する一般の理解を深めることを目的として提供されるものであり、WIPOの公式文書ではありません。本稿に記載されている見解は著者の個人的なものであり、WIPO又はWIPO加盟国の見解を反映したものではありません。