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スポーツにおけるチアリーディング音楽の使用許諾: ClicknClearのChantal Epp氏

著者: Nora Manthey (WIPOマガジン編集者)

2026/03/06

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2014年にソニー・ミュージックエンタテインメントが複数のチアリーディング音楽会社を提訴した際、世界チャンピオンのチアリーダーであるChantal Epp氏はそこに機会を見出しました。彼女のスタートアップ企業ClicknClearは、主要スポーツ分野においてオリンピック選手や一般のアスリート向けに音楽ライセンスを取得し、数十億ドル規模の市場に参入しています。

フィギュアスケートや体操競技など、振り付けを伴うスポーツの選手は、演技に音楽を使用する際、その使用に必要な権利を確保せずに演技を行うことが頻繁にあります。2016年に2度の世界チャンピオンであるチアリーダーで英国出身のChantal Epp氏によって設立されたClicknClearは、多くの法的課題がある中で、推定年間24億ドルの収益機会を活用しています。

2026年2月、スペインのフィギュアスケーター、Tomàs-Llorenç Guarino Sabatés氏が、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック大会の競技開始数日前に、人気映画のミニオンズをテーマにした演技を危うく中止せざるを得ない事態となり、これはちょっとしたメディア騒動を引き起こしました。

問題の核心はGuarino Sabaté氏のライセンス申請が却下されたことであり、音楽著作権侵害ではありませんでしたが、ClicknClearが (その他スポーツと並んで) フィギュアスケートにおいて権利許諾手続を提供する推奨業者であるため、Epp氏が質問に対応することになりました。

「昨夜はほぼ徹夜で、数多くの電話をかけ、大量のメールを送った結果、(Tomàs氏の) 残りの楽曲について承認を得ることができました」とEpp氏はLinkedInに投稿しました。「このような成果を上げることができ、大変誇りに思っています」

音楽を演技の一部として使用するスポーツは、通常、使用許諾の取得が必要となります。

ClicknClearは、オリンピックを前にした選手の権利許諾手続の大半に関与してきました。創設者Epp氏によれば、Guarino Sabaté氏の事例は、より一層の認識と啓発の必要性を浮き彫りにしており、彼女の事業が解決を目指している構造的な問題、すなわち音楽産業ではビデオゲーム産業や映画産業と比較して年間1,000億ドルの収益化格差が存在することを示しています。

この格差が生じているのは、音楽の所有者と利用者を結びつけるグローバルな音楽所有権データベースや、世界的な使用許諾システムが存在しないためです。 (クリエイター側の視点について述べた別のWIPOマガジン記事もご覧ください。)特にスポーツ分野から着手してこの問題を解決することが、Epp氏の重点課題です。

芸術的スポーツのための音楽使用許諾プラットフォーム

ClicknClearは、360万曲超を提供しており、選手はその中から好きな楽曲を選ぶことができます。また、ライセンス検証技術を提供することで、イベント主催者や競技連盟とも連携しています。

「アスリートが必要とする権利からイベント主催者まで、あらゆる権利を処理しています。これにより、アスリートは当プラットフォームから即座に音楽の使用許諾を得ることが可能となります」とEpp氏は述べています。 (音楽と知的財産について、詳しくはこちらをご覧ください。)彼女の経験では、「一般的に大きな組織は、確実に合法的に物事が行われるようにしたいと考えています」。

実際、国際オリンピック委員会 (IOC) は、選手がオリンピック競技における演技で音楽を使用する際には、常に必要な許可と同意を得ることを求めてきました。それでもなお、選手たちは使用許諾に関する問題に直面しており、Guarino Sabaté氏に関わる件は、この種の事例として初めて注目を集めたものではありませんでした。

実際、Epp氏がビジネスの構想を具体化できたのは、2014年と2022年の2つの法的な事件のおかげです。

ソニーによるチアリーディング競技会音楽に関する訴訟

2014年、ソニー・ミュージックエンタテインメントは米国において、複数の音楽編集会社を提訴しました。その理由は、チアリーディングチーム向けに無許可のリミックスを販売していたためです。

その頃、Epp氏は音楽使用許諾業務に従事しながら、競技チアリーディングにも取り組んでいました。彼女は大学在学中に、スポーツ向けの音楽制作会社を初めて設立しました。ソニー訴訟が表面化した際、専門知識を自身のスポーツ分野に活かす機会と捉えたのです。「私はその問題を解決できる」と彼女は考えました。「音楽使用許諾に関する私の知識をすべて、チアリーディングに注ぎ込みたいと思います」

2021年パラリンピック聖火点火式典において、車椅子に座ったチームメイトの肩の上にバランスを取りながら両腕を高く掲げて立つChantal Epp氏。ステージ上には他の2名のパフォーマー、大きな太鼓、そして色鮮やかな旗が配置されている。
Matt Fowler撮影 (バッキンガムシャー州議会の委託による)
Chantal Epp氏が2021年のパラリンピック聖火点火式典で演技する様子

Epp氏は、ソニーが訴訟で和解したことでスポーツにおける音楽の使用方法に変化が生じ、それが彼女がClicknClearを創設するきっかけとなったと述べました。彼女は、この案件に深く関わる弁護士と協力し、業界が必要としていた使用許諾契約を開発しました。この契約は、現在もなお彼女の事業の中核を成しています。

大型取引を通じて拡大するカタログ

現在、ClicknClearの提供するカタログは、100カ国超のレコードレーベルや音楽出版社との取引を通じて拡大しています。Epp氏によると、ソニー・ミュージックが最初に契約したメジャーレーベルであり、その後、ワーナーミュージック、ユニバーサル ミュージック、コンコード、BMGといったメジャーレーベルや大手インディペンデントレーベル、さらに数千の小規模出版社が続きました。

さらに、Sabaté氏の一件を受けて、ClicknClearは冬季オリンピック開催中に、ユニバーサル ミュージック グループ (UMG) と世界的な録音音楽取引契約を締結したことを発表しました。

同社はこれらの権利保有者と直接連携し、スポーツにおける音楽伴奏に適用される独自の一連の権利の許諾を得ています。また、ライセンス検証技術により、イベント主催者やスポーツ連盟が、あらゆるスポーツ競技会における音楽使用許諾の遵守状況を確認することを支援しています。

選手が必要とする音楽の使用権は、イベント主催者が求める権利とは異なります。例えば、主催者は撮影された演技を配布または放送したい場合があるためです。

ClicknClearを後押ししたもう1つの訴訟は、2022年に起こりました。2022年北京オリンピック終了後、作曲家のAron Mardoと Robert Mardo (アーティスト名: Heavy Young Heathens) の両氏は、米国ペアスケーターのAlexa Knierim氏、Brandon Frazier氏ならびにNBCユニバーサルに対し、彼らの楽曲「ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン (House of the Rising Sun)」のカバー曲を無断で使用したとして訴訟を起こしました。

この訴訟は、約140万ドルと推定される非公開の金額で和解が成立しましたが、こうした動きが近年注目を集めるようになったことを浮き彫りにしており、イベント主催者が規則をこれまで以上に厳しく見直す一因となった可能性があります。

スポーツにおける音楽に関するIOCガイドライン

国際オリンピック委員会 (IOC) は、2025年にスポーツにおける楽曲使用に関するガイドラインを更新しました。これは、選手が単独で権利許諾を得ようとした場合、その手続がいかに複雑になり得るかを明らかにしています。

ガイドラインにおいて、IOCはGuarino Sabaté氏のような事例について警告し、選手に対し「特定の楽曲に合わせて懸命に練習したにもかかわらず、後になってその楽曲を使用できないと判明するような事態は避けたいはずだ」と注意を促しています。

所有者は、楽曲が演技に使用されることを必ずしも承認するとは限らない

ガイドラインには、演技に楽曲を使用する際、選手は「音楽は複数の『所有者』を持つ財産のようなものであることを認識すべき」であると明記されています。これには、作曲家、録音したプロデューサー、歌詞の作詞家が含まれる可能性があり、それぞれが著作権を保有している場合があります。また、演奏者も演奏者権を保有している可能性があります。

Epp氏は、複数の楽曲をマッシュアップした曲に合わせて演技を振り付けるフィギュアスケーターの例を挙げています。各楽曲の使用にあたっては、アーティスト、作曲家、および/または音楽権利所有者からの許可が必要となる可能性が高いです。

スポーツ競技会における音楽の権利許諾

ライセンスを取得しない場合、重大な結果を招く可能性があります。カナダのアイスダンス選手、Marie-Jade Lauriault氏とRomain Le Gac氏は、2026年冬季オリンピック直前に、1990年代をテーマにした演技を変更せざるを得ませんでした。これは、お気に入りのプリンスの楽曲について、期限までに使用許諾を得られなかったためと 報じられています 。

このケースではClicknClearが直接問題解決にあたることはできなかったでしょうが、選手が問題をより早期に発見する手助けはできたかもしれません。

同社のウェブサイトでプリンスを検索すると、以下の通知が表示されます。「プリンスの音楽は権利者により制限されているため、すぐには利用できない場合があります。ご要望は承りますが、承認される可能性は低いと思われます。別のアーティストをお探しになることをお勧めします」

同社は、カタログに未収録の楽曲について、権利許諾手続のサポートも行っていますが、その場合は個別の見積りが必要になります。

スケートリンク上で、一方がもう一方に支えられながら背を反らせた姿勢をとる、ドラマチックなアイスダンスのポーズを決める2人のスケーターを上から見た様子
Getty Images/Jared C. Tilton
Marie-Jade Lauriault氏と Romain Le Gac氏、2026年冬季オリンピックにて

ただし、ほとんどの場合、ClicknClearはアスリートやパフォーマーにとってのワンストップサービスです。そして、Epp氏によれば、これを利用することは関係者全員にとって有益です。

Epp氏は、個人がClicknClearプラットフォーム外で音楽権利を取得しようとする場合、音楽所有者は作品の使用方法を決定し、手作業に伴う間接費を反映したライセンス料を設定する場合があると強調しています。さらに、彼らは楽曲が演技に使用されることを常に承認するとは限りません。

ClicknClearを通じて取得されるライセンスには、そのような権利が含まれており、1曲あたり1年間、1カ国での使用につき10ドルから25ドルの費用がかかります。一方、ソニー訴訟では、被告側はチアチームに対し、無許可音楽のミックス1曲につき75ドルから1,500ドルを請求しており、ソニーは故意の侵害に対して1曲あたり最大15万ドルの法定損害賠償を求めました。この件は法廷外で和解しています。

スポーツ大会主催者および競技連盟との提携

イベント主催者や大規模なスポーツ団体は、しばしばClicknClearのコンプライアンス技術を利用していると、Epp氏は述べています。世界選手権や大規模な競技会では、選手がClicknClearを利用して楽曲を提出し、それによってライセンス証明を受け取るよう推奨しています。これにより「監査可能な使用許諾記録」が残される、とEpp氏は説明しています。

ClicknClearは、世界体操連盟や世界水泳連盟などのスポーツ連盟とも連携し、「音楽著作権の理解を深める」手助けをしている、と彼女は述べています。「基本的には、各スポーツの管理組織と協力を進めています」

Epp氏は、大規模なパートナーシップを獲得できた成功の要因を、満たされていないニーズに対応する自身の能力であると述べています。「私たちは、他の誰も解決していない問題に取り組んでいます」と彼女は述べ、使用許諾取得の課題の規模が明らかになった時点で、主要なスポーツ主催団体に直接アプローチしたと付け加えました。

スポーツにおける音楽の未来に向けた使用許諾契約

Epp氏はゲームの双方の側面を理解しています。障害者を含むチアリーディング競技において2度の世界チャンピオンに輝いた彼女は、夫と共に18カ国でこのスポーツの普及に尽力してきました。夫妻は共同で、初のパラリンピック出場資格を有するチアリーディングチームを結成しました。同チームは2026年世界選手権大会での演技を予定しており、これはインクルーシブ・チアリーディングの10周年を記念するものです。

Epp氏はまた、2028年ロサンゼルス夏季オリンピックにおいてこのチームを披露し、国際連盟がパラリンピック競技としての承認を得る手助けと、このスポーツの発展の道筋を築くことを望んでいます。彼女は、新たな問題への認識を高める際には、これまでと同様に、そのプロセスには時間がかかることを指摘しています。

彼女の他の起業家への助言には、この経験が反映されています。「決してまっすぐな道ではありませんが、あらゆる状況に適応し、柔軟な姿勢で前進し続けることが大切です」

そのような適応力は、自身のイノベーションを保護することにも及んでいます。Epp氏は、企業秘密、コードの著作権保護、および商標を利用しています。将来的には、世界知的所有権機関 (WIPO) マドリッド制度を通じて、これらの権利を国際的に登録する計画です。「このことはワークショップで学びました」と彼女は言います。そのワークショップにEpp氏は、2025年にWIPOグローバル・アワード受賞者として参加しています。

ClicknClearは、独自技術に基づく世界初の包括的音楽ライセンスの提供を開始します。このサービスは、振り付けを伴うスポーツを配信するビデオオンデマンドチャンネル向けに開発されており、同社は市場規模がスポーツ選手向けライセンス市場と同程度に達すると見込んでいます。

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