PCTニュースレター 11/2024: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際調査の後に実行可能な手続の選択肢
Q: PCT出願を行い、国際調査機関から国際調査報告と見解書を受け取りました。見解書で提起された問題に対処し、国内段階において特許保護を取得する可能性を高めたいと考えています。この目的を達成するためにはどうすればよいのでしょうか?
A: 国際調査の目的は、関連する先行技術を発見することです。国際調査の結果は、国際調査報告 (ISR: International Search Report) に記載されます。国際調査機関 (ISA: International Searching Authority)は、請求の範囲で主張された発明に新規性、進歩性があり (非自明であり)、産業上利用可能であるかどうかについて、拘束力のない意見を提供する見解書 (WOSA 訳者注: Written Opinion of the Searching Authority 調査機関の見解書) を作成します。国際調査は、出願人に関連する先行技術を知らせることにより、出願人が国内段階での特許保護を求める前に、国際段階中に全ての締約国において有効となる補正を行うなど、その後の対応について十分な情報を得た上で決定をすることができます。
出願のこの段階での選択肢をよりよく理解し、PCT制度をより有効に活用するために、以下に一般的な選択肢を幾つか紹介します。
PCT第19条に基づく補正
ISRを受け取った後、PCT第19条に基づき (受理官庁やISAに対してではなく) 国際事務局 (IB) に対し請求の範囲の補正を提出することができます。請求の範囲の補正の提出は無料です。補正された請求の範囲はIBにより国際公開されますが、ISAは国際調査を再度実施することはありません。出願人が国際予備審査の請求を行った場合に限り、補正された請求の範囲は国際段階において審査されます。
PCT第19条に基づく補正された請求の範囲の提出は、国内法が仮保護について規定している指定国において、仮保護を取得するために請求の範囲をより明確にする理由がある場合に有用です。
補正は、出願時の国際出願の開示の範囲を超えてしてはなりません。PCT第19条に基づく補正の提出期間は、PCT規則46.1に従い、ISAによるISRの送付の日 (すなわち、発送日) から2か月、又は優先日から16か月のうちいずれか遅く満了する期間とします。適用される期間の満了した後にIBが受理した補正は、その補正が国際公開の技術的な準備が完了する前に受理された場合には、当該期間内に受理されたものとみなされます。
PCT第19条に基づく補正は、以下で構成されます。
(i) 出願時の請求の範囲と差し替えるための完全な一式の請求の範囲
(ii) 出願時の請求の範囲と補正後の請求の範囲との相違点を表示した書簡。この書簡では、最初に提出した出願の特定の部分 (明細書、請求の範囲、図面) への具体的な言及を含む、請求の範囲の補正の根拠も表示すること。
(iii) 補正と、その補正がWOSAで提起された異議を克服するのにどう役立つかを説明する、PCT第19条に基づく任意の説明書。この説明書も国際公開されます。
PCTニュースレター2010年9月号の「実務アドバイス」に、(ii) の書簡と (iii) の説明書に関する有益な情報が掲載されています。
https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2010/pct_news_2010_09.pdf (英語)
https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/newslett/2010/newslett_10.pdf#page=63 (日本語)
PCT第II章に基づく国際予備審査請求1
出願人は、PCT第II章に基づく国際予備審査請求の提出を検討することもできます (PCT規則53に関連するPCT第31条をご参照下さい)。
PCT規則54の2に従い、第Ⅱ章の請求期間は、出願人へ国際調査報告が送付された日から3か月、又は優先日から22か月のいずれか遅く満了する期間となります。
国際予備審査請求を行う際、又は国際予備審査の期間中、出願人は請求の範囲の補正に限らず、PCT第34条に基づく明細書及び/又は図面の補正を提出することもできます。また、出願人は、見解書で提起された所見に関する抗弁も提出することができます。抗弁を提出することにより、出願人は見解書に対して正式に応答することが可能となります。
国際予備審査請求は、関連する手数料の支払とともに (PCT手数料表の表Ⅱhttp://www.wipo.int/pct/en/docs/fees.pdf)、管轄する国際予備審査機関 (IPEA) に提出して下さい。国際予備審査の結果は、IPEAが作成する特許性に関する国際予備報告 (IPRP II) に示され、IBもその写しを受理し、選択官庁に伝達されます。
国際予備審査請求を検討されている出願人は、PCTニュースレターの「実務アドバイス」に掲載された2つの記事をご一読下さい。
- 2010年4月号 “Factors to be considered when deciding whether or not to file a demand for international preliminary examination – Part 1” (英語) (https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2010/pct_news_2010_04.pdf 8~11ページ)
(訳者注:「国際予備審査を請求するか否かの決定を行う際に考慮すべき要素」パート1 (日本語)
(https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/newslett/2010/newslett_10.pdf#page=31) 及び
- 2010年5月号 “Factors to be considered when deciding whether or not to file a demand for international preliminary examination – Part 2” (英語)
(https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2010/pct_news_2010_05.pdf 8~11ページ)
(訳者注:「国際予備審査を請求するか否かの決定を行う際に考慮すべき要素」パート2 (日本語)
(https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/newslett/2010/newslett_10.pdf#page=38)
国際調査機関の見解書に対する非公式コメント
出願人が国際予備審査の請求を希望しない場合でも、ISAの調査結果に対し非公式に、且つ、追加の費用をかけずに応答したいのであれば、ISAではなくこの場合もIBに対し、ISAの見解書に対する非公式コメントを提出することができます。しかしながら、その非公式コメントは国際段階では考慮されません。それらは単にWIPOのPATENTSCOPEデータベース上で、優先日から30か月後に一件書類の文書として公開されるのみです。その後、指定官庁が、国内段階においてその非公式コメントを考慮するか否か、考慮するのであればどの程度するのかを決定します。ISAの見解書に対する非公式コメントの提出は、出願人が国際予備審査を請求する妨げにはなりませんが、国際予備審査の手続の中でIPEAにより非公式コメントを考慮してもらいたいのであれば、非公式コメントは直接IPEAに提出する必要があります。
PCTニュースレター2015年1月号に実務アドバイス “Information on submitting informal comments to address issues raised in the written opinion of the International Searching Authority” (訳者注:「国際調査機関の見解書で指摘された事項に応答するための非公式コメント提出に関する情報」) が掲載されています。
https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2015/pct_news_2015_13.pdf (英語)
(訳者注: https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/newslett/2015/newslett_2015.pdf#page=6 (日本語))
特段の手続を行わず国内段階への移行を待つ
ISAから国際調査の結果を受け取った後、出願人は、国内段階移行に向けて出願を進めることを決定するまで、単に上記いずれの手続もせずに待つこともできます。これは、ISRとWOSAに出願の特許性を疑う引用や否定的な見解が含まれていない場合に典型的なケースです。否定的な引用や見解が含まれていたとしても、これらの報告書に応答する義務はありません。
また、覚えておいていただきたい重要な点は、出願人は、国内段階において国内段階移行に必要な手続を行った時点から (場合により、PCT第28条と第41条並びにPCT規則52と規則78に従い) 少なくとも1か月の間、明細書、請求の範囲と図面を補正する更なる機会を有することです。ケースによっては、ISRと WOSAで特定された問題への対処として、国内段階において特定の指定官庁に対して補正を提出することが望ましい場合もあります。