PCTニュースレター 06/2019: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
(PCT 規則69.1(A) の修正を受けて考慮すべき) 国際予備審査開始のタイミング1
Q: PCT規則69.1(a) は、2019年7月1日から、国際予備審査機関は予備審査請求期間の満了まで審査の開始を待つかわりに、予備審査請求を受け取った時点で国際予備審査を開始できるよう修正される予定である旨を知りました。国際予備審査が早く開始される場合、PCT第34条に基づく国際出願の補正書を作成する時間が少なくなることを意味するのでしょうか。
A: 2019年7月1日以降に行われた予備審査請求に関しては、国際予備審査機関(IPEA) は、原則としてPCT規則54の2.1(a) に基づき適用される期間の満了前に国際予備審査を開始することができるようになります。これは、現状の出願人が国際予備審査の早期開始を請求しない限り、IPEAはその期限の満了まで待たなければならないという規定に代わるものです。修正されたPCT規則69.1(a) では、出願人が、請求を行うための期間が満了するまで国際予備審査の開始の延期を明示的に請求することも可能です。したがって、法的権利と選択肢は実質的にはこれまでと同様です。
PCT規則54の2.1に基づく請求を行うための期間は、以下の期間のうちいずれか遅く満了する期間までとなる点にご留意ください。
- 出願人への国際調査報告(ISR) (または該当する場合には、第17条(2) に基づく国際調査機関がISRを作成しない旨の宣言) およびISAの見解書の送付日から3カ月、もしくは
- 優先日から22カ月。
2019年7月1日から発効するPCT規則69.1(a) は、その日以降に提出されるすべての予備審査請求に適用されます。またIPEAは、出願人が国際予備審査の開始をPCT規則54の2.1(a) に基づく期間の満了まで延期することを明示的に請求しない限り、規定どおり、以下の全ての要件が充足された時に国際予備審査を開始します。
- 予備審査請求書
- 国際予備審査のために支払う諸手数料、そして
- ISRまたはPCT第17条(2) に基づく宣言、およびPCT規則43の2.1に基づき作成された見解書
請求を提出すべき期間、および/または適用される手数料の支払期間の満了直前まで待つ場合、またはISR (もしくは宣言) および見解書が国際調査機関(ISA) により遅く作成された場合には、国際予備審査の開始はいずれにせよ遅れるでしょう。そのためPCT第34条(2)(b) に基づく補正書の作成に、より多くの時間を費やせるでしょう。ただし、請求を早期に提出した場合であっても、2019年7月1日から発効する修正された請求書様式(様式PCT/IPEA/401) の該当するボックス(第lV 欄のチェックボックス4) をチェックすることで、IPEAに対して国際予備審査の開始を予備審査請求期間の満了まで延期するよう請求することができます。
PCT第34条に基づく補正がまだ準備できておらず、PCT規則54の2.1(a) に基づく期間の満了に差し迫っていて、かつPCT第34条に基づく請求の範囲、明細書および/または図面の補正を基礎として国際予備審査の開始を希望するのであれば、少なくとも予備審査請求をその期間内に確実に提出することが重要です。PCT第34条に基づく補正を基礎として国際予備審査を開始することを希望する場合には、第IV欄のチェックボックス12の該当するボックスをチェックして、予備審査請求書にその旨を表示する必要があります。PCT第34条に基づく補正に基づいた国際予備審査の開始を希望する旨を予備審査請求書に表示したにもかかわらず、実際にはそのような補正が提出されていない場合には、IPEAはPCT規則60.1(g) に基づき(様式PCT/IPEA/431を使用して) 補正提出命令書に定められた期間内に、欠落している補正を提出するよう要求します。そして、国際予備審査の開始は、補正が受理されてから、または命令書に定められた期間が満了してからになります
(PCT規則69.1(e))。ただし、この場合には、国際予備審査に利用できる時間は少なくなることにご留意ください。
上述した状況において、予備審査請求書にそのような表示をしない場合には、IPEAは、予備審査請求書、手数料、ISR (またはPCT第17条(2) に基づく宣言) およびISAの見解書の要件が充足された時に国際予備審査は開始され、IPEAは(PCT規則55.2に基づく必要な翻訳文が提出されていることを条件に) 報告書の作成を開始することができます。報告書の作成を開始した後は、IPEAは(追加の) 補正を必ずしも考慮に入れる必要はありません(PCT規則66.4の2)。
出願人の法的権利と選択肢は実質的にこれまでと同様ではありますが、PCT 規則69.1(a) の変更により、実際にはIPEAにとっては国際予備審査の実施により多くの時間が利用できるようになります。これはIPEAが出願人の明示的な同意なしで、現状よりも早く国際予備審査を開始できるようになるためです。これに伴い、出願人とIPEAの双方にとって次のような利点があります。
- より多くの時間をかけて出願人と審査官が対話できるようになります。これにより、出願人により良いサービスを提供できると共に、審査官が明確な情報を取得するための時間も多くなります。
- 出願人が2回目の見解書を取得し、その見解書に関するコメントを提供できる可能性が高くなります。
- 高品質な見解書および第ll章に基づく特許性に関する国際予備報告書(IPRP第ll章) をIPEAから提供できるようになります。
IPEAの見解書とIPRP第ll章が早く利用可能になれば、関連する官庁間にPCT特許審査ハイウェイ(PCT-PPH) およびグローバルPPH試行プログラムが存在しており、適用される要件が充足されている場合には、これらのプログラムを介して国内および広域段階における国際出願の早期処理を促進させることもできます。
したがって、上述の理由により、出願人によるISRおよびISAの見解書の評価によって、国際出願をさらに進めるに値するとが認められた場合には、好ましくは予備審査請求をできる限り早く提出すべきでしょう。それでもやはり、出願人が予備審査請求を行った後に補正の作成により多くの時間を費やすことを選択し、IPRP第ll章の作成前に補正が提出されることを確実にすることを希望する場合には、国際予備審査の開始の延期をIPEAに請求することが可能です。
- 訳注: 国際予備審査機関としての日本国特許庁(IPEA/JP) に予備審査請求を行う際は、注意点についてさらに日本国特許庁の以下の案内をご参照ください。https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/chosa-shinsa/yobishinsa_iv4_20190701.html
- このチェックボックスは、国際予備審査の開始は、当初出願された要素を基礎としてするのか、PCT 第34 条に基づき補正された要素を基礎とするのか、または、請求の範囲のみの場合には、PCT 第19 条に基づき補正された請求の範囲を基礎とするのかどうか、IPEA に対して明確にする目的で、全ての状況において完全に記載されるべきです。