PCTニュースレター 05/2011: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際段階において遅延なく国際出願の手続を進める機会を最大化するためにとりうる行動
Q: 多くの国での可能な限り早期の特許取得を希望する発明者の代理人です。したがって、PCT 出願はパリルートによる国毎の出願に比べて有利でしょう。早期の特許取得を目指すため、国内段階に移行して PCT-PPH の利用を検討しています。PCT-PPH 手続に利用するため国際調査報告(ISR)及び国際調査機関の書面による見解(WOSA)を早期に得るためにとりうる行動が何かありますか?
A: 一般的に、PCT において、国際事務局、受理官庁、国際調査機関、国際予備審査機関(後述するいくつかの例外はあるが)に対して、PCT において規定されている期限は手続を実行するのに非常に厳しいことから、国際段階での手続を早めるための規定は提供されていません。しかしながら、早期審査のための PPH 請求の基礎となる見解書を可能な限り早く入手して国内段階に移行する可能性を高めるべく、遅滞なく国際調査が行われるようにする機会を最大化するためにとりうる多くの行動があります。ただし、これらの行動は実務上の指針にすぎず、手続を促進することを保証することはできません。
国際段階の手続の迅速化を助ける出願戦略
(1)先の国内出願を出願していない場合、(優先権主張なしに)PCT 出願から開始
すでに国内出願を行っているか否かは言わないが、先の出願がない場合かつ PCT 国際出願を行う意図がある場合には、通常の国内出願よりむしろ国際出願から開始することができます。このような方法で PCT を利用することにより、可能な限り早く ISR 及び WOSA の取得が可能になります。なぜなら、PCT 規則 42 及び 43 の 2 によると ISR 及び WOSA は優先日から9 月或いは国際調査機関による調査の写しの受理から 3 月のいずれか遅い日までに作成しなければならず、例えば、2011 年 6 月 1 日に(優先権主張を伴わず)最初に PCT 出願を行った場合、ISR 及び WOSA は 2012 年 3 月 1 日までに作成されます。もし、2011 年 6 月 1 日に国内出願を提出し、その後、仮に 10 ヶ月後の 2012 年 4 月 1 日に(先の国内出願に基づく優先権主張を伴い)国際出願を行った場合、ISR 及び WOSA は早くとも 2012 年 7 月 1 日が作成期限になります。
(2)受理官庁及び国際調査機関の選択
PCT-PPH プログラムでの国内段階での早期審査の請求は、肯定的な(国際機関の)見解が作成された場合のみ可能です。いかなる国際機関も受理官庁から調査の写しを受理するまで国際調査を行うことができないので、国際調査機関としても行動する受理官庁に対して国際出願を行うことにより、受理官庁から国際調査機関への調査の写しの送付による遅延の可能性を減少することができます。
受理官庁の選択に国際調査機関としても行動する官庁が含まれていない場合、国際調査機関への調査の写しを速やかに転送している実績を有する受理官庁を選択することができます。選択した受理官庁の国際事務局への国際出願の転送の適時性(つまり、国際調査機関への転送の適時性も推定される)に関する統計が "The International Patent System: Performance Indicators"("Timeliness of Receiving Offices (RO) to transmit copies of PCT application to the International Bureau: selected Receiving Offices" という題の表を参照)と題した文書の 8 から 9 ページでご覧いただけます。
http://www.wipo.int/ipstats/en/statistics/pct/pdf/performance_indicators.pdf
なお、受理官庁としての国際事務局は(曲線の最初の急上昇部が示すように)国際出願に何ら問題がない場合には最も早く調査の写しを送付しますが、PCT 規則 19.4 に基づく非管轄受理官庁からの非常に遅く転送されるケースを含む、解決に長い時間を要する多くの問題のあるケース(曲線の長い後半部分が示すように(送付に時間がかかるケースがある))を受理している点にご留意下さい。
国際調査機関の選択肢が複数存在する場合(国際調査機関の選択は PCT 規則 35 に従い、国際出願を行った受理官庁によって決定される)、ISR をより早く提供する傾向のある国際調査機関を選択することができます。これにより、ISR 及び WOSA(WOSA は通常 ISR と同時に作成される)をより早く受理する機会が増加するでしょう。この決定に際し、上記の文書の入手の適時性の統計が有用です;"Timeliness of International Searching Authorities (ISAs) to transmit International Search Reports (ISRs) to the International Bureau" と題した 16 から21 ページの表をご参照下さい。しかしながら、この統計は、国際調査機関が受理する調査の写しを送付する受理官庁で発生するかもしれない遅延にバイアスを受ける可能性があり、また、国際調査機関が WOSA を作成するのに要する時間は、発明の技術分野に依存する可能性がある点にご注意下さい。
(3)方式上の要件
手続の遅延を最小限にするために、出願する前に、国際出願がPCT第 11 条に基づく必要な要件をすべて満たしているか確認すべきです。そして、訂正による時間のロスを避けるべくPCT第 14 条に基づく欠陥を含んでいないことを確認するため注意深く出願をチェックすべきです。国際出願を電子出願する場合、電子出願ソフトの検証によりいくつかの方式上のエラーを防ぐ可能性があるというメリットがあります。さらに、国際出願をRO/IBに電子出願する場合、国際出願のスキャン工程を回避することができ、受理官庁の手続を早める可能性があります。(電子出願又は紙出願にかかわらず)受理官庁に対して国際出願の訂正が必要な場合、郵送よりむしろFAXでの書類送付による早期の対応を行うべきです。また、RO/IBへの出願の場合、PCTオンラインドキュメントアップロードサービスの利点を活用することができます(https://webaccess.wipo.int/pctservice/en/)。オンラインドキュメントアップロードを利用することにより、国際事務局はスキャン工程を省略し、自動的に担当官に文書が贈られるため、手続に要する時間をさらに減少させることができます。
国際出願が配列リストを含む場合、電子出願された国際出願の一部として、テキストファイルとして提出されることが望ましいです。この方法による出願(PCT 実施細則セクション707(a の 2)参照)は料金が安いことに加え、国際調査の目的で必要となるコピーに関連する問題が発生するリスクが除かれます。
国際出願は国際調査機関(受理官庁も同様)によって認められている言語で行う、あるいは出願時に要求される翻訳文を提供することを確実にして下さい。国際出願が国際調査機関に認められている言語で行われない場合、国際調査機関は必要な翻訳文を受理するまで国際調査を開始することができません(国際出願の言語に関するさらなる情報は PCT 規則 12 参照)
(4)発明の単一性
国際調査(該当する場合には、国際予備審査)の実行の遅延を避けるために、出願が発明の単一性を欠如していないよう確認が必要です(PCT 規則 40 及び 68 参照)。もし発明の単一性が欠如している場合、追加手数料の支払のための通知が発効され、出願人は手続が進められる前に手数料を支払わなければならないため、手続が長くなります。
(5)手数料の迅速な支払
送付手数料、国際出願手数料、調査手数料は出願時に支払われるべきで、かつ、その時点で適用される額を支払っていることを確かめるべきです。特に、調査手数料が支払われて後にしか国際調査機関へ調査の写しは送付されません(PCT 規則 23.1(a))。手数料が設定されていない通貨での支払手数料は、為替変動により当該手数料の換算額とかなりの頻度で差額が生じるので特別に注意を払う必要があります(最新の手数料については、PCT Newsletter の手数料表をご参照いただくか、直接受理官庁にお問い合わせ下さい)。RO/IB に出願する場合、クレジットカードによる支払(PCT E-payment)は手数料支払手続を迅速化します:当座勘定又は預金勘定での決済による支払と同様、口座に十分な金額がある場合、迅速化されます。
国際段階における手続促進化のための特別な行動
国際段階の特定の局面での手続迅速化を可能にするいくつかの行動を開始することができます:
- 国際予備審査の請求を提出する意思がある(WOSA において十分な数の請求項について肯定的な建機亜が示されず、PCT 第 34 条に基づく請求の範囲の補正の機会を利用することに関心がある)場合、手続迅速化のための 1 つの様式を利用することが可能です-国際予備審査の請求書(様式 PCT/IPEA/401)の第 IV 欄の 4.のボックス(「出願人が国際予備審査を規則 54 の 2.1(a)に基づき適用される期間の満了よりも早く開始することを明示的に希望する」)にチェックを入れることができます。このボックスにチェックが入っていない場合、国際予備審査機関は予備審査を開始する前に優先日から 22 月まで待つことができ、国内段階移行前に特許性に関する国際予備報告(PCT第II章)の取得を希望することになるでしょう。
- PCT 第 21 条(2)(b)及び規則 48.4 に基づく国際出願の早期公開を請求することができます。しかしながら、この請求は、ISR 及び WOSA がまだ利用できない場合、PCT-PPH に基づく国内手続の開始時期に影響は与えません。ISR が国際出願と同時の公開に利用できない場合、早期公開の請求には、PCT 出願人の手引きの附属書 B2(IB) に示されているように、特別な公開の手数料の支払が課せられます。
- ISR 及び WOSA が発行されれば、PCT 第 22 条(又は 39 条)に規定された行動を実行した場合に、早期の国内手続のため、指定(選択)官庁に対して明示の請求をすることによって国内段階へ移行したとみなされるでしょう。通常、国際事務局は、書面による見解は(特許性に関する国際予備報告(第 I 章)の形で)優先日から 30 月の期間満了後に指定官庁に送付します(PCT 規則 44 の 2.2(a))。しかしながら、PCT 第 23 条(2)に基づき早期の国内手続を請求する場合、国際事務局は出願人又は指定官庁の請求に基づき指定官庁に対して特許性に関する国際予備報告(第 I 章)を速やかに送付します(PCT 規則 44 の 2.2(b))。(指定官庁により英語翻訳が請求される場合は PCT 規則 44 の 2.3 をご参照下さい。)(訳者注:報告原文(例えば日本語)の指定官庁への送付の請求は出願人が行うことが可能ですが、報告英訳は指定官庁による請求のみ可能です(出願人は請求できない)。また上記請求を行う際にはPCT 第 23 条(2)とともに該当規則を明示していただくようお願い致します)
PCT-PPH に関するさらなる情報は、PCT Newsletter 2011 年 2 月号の実務アドバイスをご参照下さい。