PCTニュースレター 04/2019: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
カラー図面を提出する際に注意すべき事項
Q: カラーで結果を出力する装置からなる発明に関して、まもなく国際出願を提出する予定です。本発明の理解を容易にするため、図面はカラーで提供できるのが望ましいです。出願の一部としてカラー図面を提出することは可能でしょうか?提出できるのであれば、カラー図面はどのように作成されるべきでしょうか?また意図的にカラー図面を提出している旨を国際事務局に知らせるべきでしょうか?
A: PCTにはカラー図面(または写真1)に関する規定はありません。さらに、PCT規則11.13に従い、図面は、"耐久性のある、黑色の、十分に濃厚な、均一の太さの、かつ、明瞭な線及び画で着色することなく、作成する" こととされています。可能であれば、最初からその規則を遵守し、明細書において関連する色について必要な説明を提供するべきです。これは、一部の官庁に対する国内段階において白黑図面の提供が必要とされる場合があり、その白黑図面の提供は主題(subject matter) を追加しない限り困難であるまたは不可能である場合があるためです。
しかしながら、カラー図面の提出はPCTの下では通常は許容されていませんが、受け取ったカラー図面は受理官庁および/または国際事務局(IB) によって保有されます。ただし、その後の利用可能性はいくつかの要素により異なるでしょう。
例外的に、カラー図面が提出される場合は、その図面はA4判の大きさの用紙を使用しPCT規則11.6 (c) に規定されている余白をとり、通常はPCT規則11.11および規則11.13に基づく要件を満たさなければなりません。受理官庁はカラー図面が提出された場合に必ずしも差し替え用紙を要求するわけではありませんが、出願人が後から差し替えの白黑図面 を提出しない場合(自身の選択または受理官庁からの補充命令書の後のどちらであっても)、IBは国際公開の目的で、すべての図面を白黑(グレースケールではない)に変換することに十分ご注意ください。また場合によっては、受理官庁が図面を
IBに提出する前に変換を行う可能性があることにもご留意ください。繰り返しになりますが、公開目的の図面の品質は保証できません。IBは最大限に努力してカラー図面の白黑への変換またはスキャンを行いますが、公開される出願の図面の明確性を保証することはできません。その結果、細部が喪失される可能性があり、国際出願における発明の開示に影響を与え、国際段階および国内段階における国際出願の処理に影響を及ぼす可能性があります。
元の書類と比較して白黑への変換が特定の不正確さをもたらす可能性があることを考慮して、ePCT出願2を利用して電子的に出願する場合、IBは専用のプレビュー機能を利用できるようにしました。これにより出願人は、PDFまたはDOCX形式のいずれかで提供される出願本体のコンテンツが、その後の手続きおよび公開目的でIBによりレンダリングされた状態のものを、出願する前に確認することができます。したがって出願人には、ePCT出願を利用して出願を提出する前に、変換された画像の内容が当初の意図したとおりになっているかを確認する機会があります。プレビュー機能: "国際事務局による処理後の書類の出力状態を確認" (view document as it will be rendered at the IB) では、IBで書類のインポートおよび公開に使用されるものと同一の変換プロセス("DocConverter") に基づいて行われているため、書類はIBにより公開されるものとほぼ同じであるはずです。ただし、受領官庁が記録の写しをIBに送付する前に、イメージを含むページをそれ以上変換しない場合に限ります。
DocConverter プレビュー機能は、サインインする必要なしで、独立した機能としても利用できます。以下のリンクからご利用ください。
https://pctdemo.wipo.int/DocConverter/pages/pdfValidator.xhtml
https://pctdemo.wipo.int/DocConverter/pages/home.xhtml
ドロップダウンメニューのアイコンをクリックすると、変換機能一式とユーザガイドにもアクセスできます。
ePCT 出願の一部として同じプレビュー機能がすでに直接提供されていることは上述しましたが、これはePCTで出願本体のアップロードを許可していない受理官庁(受理官庁としてのイスラエル特許庁および米国特許商標庁) への出願を除外していることにご留意ください。
受理官庁が電子出願された出願本体の写しを出願時の元の形式でIB に送付した場合、IB はその写しをPATENTSCOPE 上で公開します。利用した電子出願ソフトウェアが、国際出願の一部としてカラーコンテンツが提出された旨の特定の表示をすることができる場合(ePCT 出願または場合によってはPCT-SAFE を利用して提出された国際出願の場合)、その表示が国際公開公報の表紙に表示が掲載されます。その表示には、提出された出願にカラー(または該当する場合にはグレースケール) の内容が含まれていること、およびそのカラーの内容はPATENTSCOPEで利用可能であることが記載されます。
ePCT出願を利用する場合、ePCTでは通常アップロードされる出願本体のファイルに含まれるカラーまたはグレースケールを自動的に検知し、該当するチェックボックスを事前にチェックするため、意図的にカラーコンテンツが提出された旨を表示する必要はありません。ただし、出願本体の作成にあたって出願人が利用したソフトウェアが純粋な白黑画像を異なるファイル形式に変換することで、変換された図面は白黑のように見えるにもかかわらずカラーまたはグレースケールとして検知される場合があります。このようなケースのようにシステムが誤って検知したとユーザが判断した場合、当該チェックボックスは手動でチェックを外すことができます。
PCT-SAFEを利用する場合にはチェックボックスは選択された受理官庁がIBである場合にのみチェック可能であり、手動でチェックされる必要があります。そして提出された図面は白黑ではなく本来は白黑であるべきことを確認する注意喚起が続いて行われます。
PATENTSCOPE上の書類の一覧では、以下のいずれかのアイコンが項目"出願時出願本体(Application Body as Filed)" の右側に表示され、出願当初に提出されたカラー(またはグレースケール) イメージを含むファイルへのショートカットとして機能します。
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カラーアイコンは、国際出願にカラー (またはグレースケール) イメージが含まれている旨の表示が表紙に掲載されている場合に使用されます。グレーアイコンは、表紙にそのような記載がない場合(つまりカラーが自動的に検知されなかった場合、または出願人により明示的に通知されなかった場合) に使用されます。
出願当初の図面を提供することで、カラー図面が受理される官庁における国内段階の処理が支援されます。それらの官庁では、国内法令および手続に従って、国内段階処理の目的において受理可能なものを決定するために、それらの図面を確認することが可能になります。しかしながら、すでに述べましたように、すべての図面はIBによりさらに処理され公開のために純粋な白黑形式に変換されます。それにもかかわらず、要求された場合には、主題(subject matter) を追加せずにカラー画像を表現する純粋な白黑図面を他の官庁に提供する必要性が除外されることにはなりません。
IBは将来的には、出願本体に含まれるカラーコンテンツの提出と公開が許容できるようになることを望んでいます。特にPCT作業部会の枠組みの中で、国際段階におけるカラー図面の受理に関する将来的な可能性について多くの議論が重ねられてきました。しかしながら、多くの技術的、法的および手続上の考慮事項に対処する必要があり、これらの問題に関する協議は受理官庁、国際調査機関および国際予備審査機関、指定/選択官庁、ならびにPCTシステムのユーザを代表する特定の関心のある政府間機関および非政府機関と共に定期的に行われています。
ただし、当面の間は、多くの国内段階の手続では引き続き出願本体には純粋な白黑の内容が求められます。指定官庁がPATENTSCOPE を介して出願当初のファイルにアクセスできたとしても、新しい主題(subject matter) を追加することなく、受け入れ可能な白黑図面を作成することは依然として困難または不可能でしょう

