PCTニュースレター 02/2014: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
指定官庁による PCT 規則 4.17 に基づく申立ての受入
Q: 各国の国内段階に入った、ある国際出願の代理人をしている者です。国際出願の出願人名が優先権を主張している先の出願の出願人名と同一ではないため(企業名が変更されました)、PCT 規則 4.17(iii)に基づく、先の出願の優先権を主張する国際出願日における出願人の資格についての申立てを国際出願と共に行いました。しかしながら、指定官庁の一つが、名称の変更に関して更なる情報を要求しています。申立てを行う目的は、国内段階で関連する書類の提出を回避するためのものだと思っていたのですが、この件についてご確認いただけないでしょうか。
A: 指定(又は選択)官庁(以下、指定官庁)は、優先権書類に記載された出願人名が国際出願に記載された出願人名と異なる場合、当該国の国内法令に基づいて、書類又は証拠を要求することができます。しかし、PCT 規則 4.17(iii)に基づく申立てが、国際出願と共に、又は、その後の国際段階中(PCT 規則 26 の 3 に基づく期間が満了する前)に、或いは、国内段階移行時に行われた場合、指定官庁は当該申立ての真実性について合理的な疑義がない限り、更なる書類又は証拠を要求することはできません(PCT 規則 51 の 2.2(iii)参照)。
PCT 規則 4.17 に基づく他の申立てについても同様の規則が適用されます。
- 発明者の特定に関する申立て(PCT 規則 51 の 2.1(a)(i));
- 出願し及び特許を与えられる国際出願日における出願人の資格に関する申立て(PCT規則 51 の 2.1(a)(ii) );
- 発明者である旨の申立て(PCT 規則 51 の 2.1(a)(iv))(米国を指定国とする場合のみ)PCT 規則 4.17(v)に基づく申立て(不利にならない開示又は新規性喪失の例外に関する申立て(PCT 規則 51 の 2.1(a)(v)))がされた場合は、不利にならない開示や新規性喪失の例外は特許性に関する重要な事項なので、指定官庁は自由に更なる書類又は証拠を要求することができます。
2001 年 3 月 1 日に発効した指定官庁による申立ての受入を規定している PCT 規則は、当初複数の国から国内法令と適合しないという通告を受けましたが、その後、それら国々はすべてそれらの不適合に関する通告を取り下げています。つまり、原則としていかなる指定官庁も、PCT 規則 4.17 に関する申立てによって扱われる事項に関する各国独自の申立てを要求したり、申立ての標準文言に含まれるもの以外の更なる情報を要求したりする資格がないことを意味します。しかしながら、上記の通り例外があり、もし指定官庁が PCT 申立てや申立ての表示の真実性について合理的な疑義があると認めれば、PCT 規則 51 の 2.2 に基づき、当該指定官庁は問題となっている事項に関する更なる書類又は証拠を要求する資格があります。これは、ケースバイケースで判断されますが、通常、そのような情報を提供するよう官庁から要求されることはありません。
PCT 規則 4.17 及び 51 の 2.2 は、指定官庁がさらなる書類又は証拠を要求するケースを最小限にするためにあります。指定官庁の国内法令が PCT の要件と異なる要件を含む限りにおいては、PCT の規定が優先されますので、関係国は本件がそのケース(つまり書類又は証拠を要求されるケース)に該当することを明確にする責任があります。国際段階中に国際事務局(IB)に対して申立てを行うことに関する規則を採択するにあたり、締約国は、出願人が期限内に PCT 実施細則に記載された標準文言で申立てを行った場合はその申立てを記載された通りに受入れることに合意しています。
申立ての文言が標準文言で構成されていない場合(PCT 実施細則第 211 号~第 215 号参照:http://www.wipo.int/pct/en/texts/pdf/ai.pdf)、IB は出願人に(様式 PCT/IB/370 を用いて)通知し、出願人は PCT 規則 26 の 3.1 に基づく期限内に申立てを補充する機会を持ちます。もし、国内段階へ移行する際に申立ての文言が標準文言で構成されていない場合、指定官庁によっては適応される国内法令により当該申立てを受入れる場合があるかもしれませんが、そうしなければならないことは要求されていません。申立ての標準文言を利用することの重要性については、PCT Newsletter 2010 年 10 月号の"実務アドバイス"をご覧ください。
標準文言が適用されないような特定のケースであれば、出願人は PCT 規則 4.17 で規定されている申立てを利用すべきではなく、国内段階へ移行する際に求められる関連する国内要件に適合させる必要があります。
申立てに関する詳細は下記リンク先の PCT 出願人の手引 国際段階の概要パラグラフ 5.074~5.083 に、また、各指定国の PCT 規則 51 の 2 に基づく要件については、当該 PCT 出願人の手引 各国の国内段階の概要をご参照ください。
http://www.wipo.int/pct/en/appguide/