注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

先の出願の出願人と国際出願の出願人とが異なる場合の国際出願

Q: 当方は、法人出願人 (B社) の代理人として国際出願を行う予定です。国際出願で優先権を主張している先の出願は、別の企業 (A社) が出願し、その後B社に譲渡されました。先の出願の出願人が国際出願の出願人と異なる理由を説明するために、何か行動を起こすべきでしょうか?

A: 国内 (若しくは広域) 段階へ移行する際、多くの指定 (若しくは選択) 官庁は、先の出願に基づく優先権を主張する出願人の資格に関する証明を含む書類を要求しています。例えば、国際出願の出願人が先の出願の出願人とは異なる場合、又は先の出願がされた日以後に出願人の氏名が変更されている場合です。そのような要件は、PCT規則51の2.1(a)(iii) に従い許容されています。PCT出願人の手引(/pct/en/guide/index.html (英語) (訳者注: 言語切替リストから日本語が選択可能)) の該当する国内編の概要ページから、上記の証明書を要求している官庁を確認することができます。また、PCT出願人の手引には、PCT規則51の2.1(a) に列挙されている他の要件に関する情報も記載されています。例えば、指定 (若しくは選択) 官庁としての米国特許商標庁は、PCT規則51の2.1(a)(iv) に許容されている通り、発明者の宣誓書又は宣言書を要求しています。

出願人は、国内段階へ移行する際に、資格に関する証明書又は他の必要書類を提出する権利を有していますが、PCTでは、すでに国際段階中に (各要件につき一通の) 申立てを提出可能な旨を規定しています。申立ては、特にPCT規則51の2.1(a)(iii) に基づき証明書を要求している官庁を含む全ての指定官庁に対して有効であるため、出願人にとって国内段階での手続が簡素化されることになります。

上述した事例のように、国際出願に記載された出願人と先の出願に記載された出願人が異なる場合には、A社からB社への譲渡が国際出願前に行われたことを条件として、PCT規則4.17(iii)に従い、「先の出願に基づく優先権を主張する国際出願日における出願人の資格であって、51の2.1(a)(iii) に規定するものに関する申立て」を提出することができます。

PCT規則4.17(iii) に基づく申立て (及びPCT規則4.17に基づくその他の申立て) は願書様式に含まれており、PCT実施細則第213号(/pct/en/texts/ai/s213.html) (英語))に規定されている標準文言に準拠しています。この申立ては、PCT規則26の3.1に基づく期間の満了、すなわち優先日から16か月以内に受理されることを条件として、国際出願時に提出することも、出願後に提出することもできます。 ただし、当該期間の満了後に国際事務局 (IB) が受理した申立てについては、その申立てが国際公開の技術的準備が完了する前に国際事務局 (IB) に到達した場合には、当該期間の末日にIBが受理したものとみなされる点にご留意下さい。

出願時に提出された申立ては、受理官庁に送付され、願書の一部となります。 ですが、出願後に提出された申立ての場合には、申立てを追加する旨を説明した書簡を添えて下さい。特にPCT規則26の3.1に基づく期間が満了間近な場合には、IBにそれらの書類を送付することをお勧めします。公開のための技術的準備が完了する前にIBが受理した全ての申立ては、PATENTSCOPEで公開されます。 PCT規則26の3.1に基づく期間の満了後にPCT規則4.17に基づく申立てを提出する場合には、当該期間が満了した旨及び関係する指定官庁ごとに申立てを行う必要がある旨が通知されますのでご注意下さい。

出願人は可能な限り、ePCTを利用して申立てを作成し提出して下さい。受理官庁がePCTを利用した国際出願を受理している場合には、ePCTを利用して国際出願を行う際に申立てを提出することができます。一方、受理官庁がePCTを利用した国際出願を受理していない場合には、通常の方法で出願した後、ePCTのeOwner若しくはeEditorによる国際出願へのアクセス権が設定されていることを条件として、該当するePCT「アクション」を利用して申立てを作成し、IBに提出することができます。ePCTを利用すると、申立ての標準文言は正しい言語で自動的に生成され、ePCTで利用可能な関連する書誌データは、再入力の必要なく自動的に申立てに記載されます。ePCTからの国際出願へのアクセス権がない場合には、機能が統合されたePCTアクションを利用するよりも実用性は劣りますが、申立てはePCT以外の方法でも作成でき、アクセス権を必要としないePCTのドキュメントアップロード機能を使ってIBに対しPDF形式で申立てをアップロードすることも可能です。申立てに関するePCTアクションの利用や、特にePCTの外部署名機能を利用した発明者である旨の申立ての電子署名について、詳しくはPCTニュースレター 2019年10月号の実務アドバイスをご参照下さい。

https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2019/pct_news_2019_10.pdf (英語)

/pct/ja/newslett/2019/newslett_2019.pdf#page=81 (日本語)

また、ePCTアクションの利用に関する手順は、以下をご覧下さい。

/en/web/epct/learnmore?N=843 (英語)

さらに詳しい情報については、カスタマーヘルプデスクeservices@wipo.int までお問い合わせ下さい。

なお、出願時に提出される申立てについては、願書 (PCT/RO/101) の一部を構成するため、国際出願のページ数に含まれることにご注意下さい。つまり、願書用紙がすでに30枚を超えていれば、用紙1枚追加するごとに追加手数料を支払う必要があります。ただし、国際出願後に申立てを提出する場合には、追加手数料は必要ありません。

申立てが適用される期間内に提出されていることを条件として、指定官庁は、申立ての真実性について合理的な疑義がない限り、先の出願の優先権を主張する資格に関する追加の書類又は証拠の提出を要求することはできません (PCT規則51の2.2(iii))。PCT規則4.17に基づく申立てを受理する指定官庁の要件の詳細については、PCTニュースレター 2014年2月号の実務アドバイスをご参照下さい。

https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2014/pct_news_2014_2.pdf (英語)

/pct/ja/newslett/2014/newslett_14.pdf#page=12 (日本語)

特定の事例の状況が標準文言に当てはまらない場合には、PCT規則4.17に規定する申立てを使おうとせず、国内段階に移行する際に関連する国内的要件に従って下さい。

なお、PCT規則4.17(ii) から (iv) に基づく申立ては、国際出願日における状況のみに関連しており、その日以後に生じた発明者又は出願人に関する変更の通知には使用できない点にご留意下さい。それらの変更に関しては、PCT規則92の2に基づく手続を行って下さい。

また、ご注意いただきたいのは、欧州特許庁など一部の指定官庁又は選択官庁は、先の出願の出願人から国際出願の出願人への優先権の実体的な譲渡は、国際出願の出願日前に行われていることを要求する場合があることです (PCT出願人の手引の国内編参照)。

参照リソースとして、PCT申立ての提出に関するウェビナーの録音 (英語) (2021年6月24日配信) が視聴可能です (訳者注: 日本語ウェビナーの録音、PCTウェビナーシリーズ: 申立てのベストプラクティス (2021年8月4日配信) も視聴可能)。ウェビナーで使用されたPDF版プレゼンテーションと共に、下記のリンクからご利用下さい。

/pct/en/seminar/webinars/index.html(英語)

(訳者注: ページ右上の言語切替ドロップダウンリストから日本語が選択可能)