PCTニュースレター 01/2019: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
優先権主張が国際段階で確認される範囲
Q: 当方の国際出願において先の国内出願の優先権を主張しています。優先権主張の有効性が国際段階で確認される範囲を知りたいのですが。
A: 端的に言うと、特定のケースでは国際調査機関(ISA) および/または国際予備審査機関(IPEA) が国際段階において優先権主張の有効性に関して見解を述べる場合もありますが、その有効性は国内段階の指定官庁によってのみ決定的に判断されます。今回のテーマの背景情報を確認していきましょう。
優先権主張を定める規定は、工業所有権の保護に関するパリ条約(パリ条約) の第4条に含まれています。国際出願は、PCT第8条(1)("優先権主張") の定めるところにより、パリ条約の締約国においてまたは同条約の締約国ではないが世界貿易機関(WTO) の加盟国において提出された一または二以上の先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができます。PCT手続に関する限り、優先権主張はPCTの期間を計算する上で優先日を設定するために特に重要です(PCT第2条(xi)(a) 参照)。
受理官庁 (RO) と国際事務局(IB) は優先権主張の実体的な有効性は考慮しませんが、PCT規則4.10に基づき要求されているとおり、先の出願に関する以下の全ての情報が優先権の主張に含まれているか、ROは最初に点検を行いIBは2回目の点検を行います。
- 先の出願が提出された日付(これは通常国際出願の優先日とみなされます)
- 先の出願の番号
- 先の出願が提出された場所に関する情報
- 先の出願が国内出願である場合、その出願がされたパリ条約の締約国または同条約の締約国ではないがWTO 加盟国である国の国名
- 先の出願が広域出願である場合、その出願がされた広域官庁名1
- 先の出願が国際出願である場合、その出願がされた受理官庁名
ePCT出願またはPCT-SAFEを利用して出願する場合は自動検証が実行され、例えば優先権主張に欠けている要素や無効な要素があれば知らせます。JPO-PASやEPOオンライン出願のような他の特定の電子出願ソフトウェアを利用する場合も同様です。
先の出願の出願日が含まれていることを点検するとともに、ROとIBは国際出願が先の出願の提出から12カ月以内に(すなわち、"優先期間" 内に(PCT規則2.4参照)) 提出されたことを点検します。しかしながら、国際出願日が優先日の満了日より後であるという理由だけで、優先権主張が無効とみなされることはありません。ただし、その国際出願日が優先日の満了日から2カ月以内である場合に限ります。これは、国際段階における受理官庁に対して(PCT規則26の2.3) または国内段階における指定(または選択) 官庁に対して(PCT規則49の3.2) のいずれかで、優先期間に関する優先権の回復が出願人に認められる可能性を考慮するものです。
優先権主張に関連する欠陥が存在する場合、例えば12カ月の優先期間の満了から2カ月の期間が経過した後の出願、記載の欠如、または先の出願の番号もしくは先の出願の日付が優先権書類に記載されている番号または日付と一致しない場合には、ROまたはIBはPCT規則26の2.2に基づき出願人に対し優先権主張の補充をするよう求めます。優先権主張に関する情報の補充/追加の詳細は今後、別個の"実務アドバイス" に掲載予定です。
優先権主張がPCT規則26の2.1(a) に基づき適用される期間内に補充されなかった場合には、優先権主張は以下の場合においてなされなかったものとみなされ、結果として、先の出願の出願日は PCT
の期限を計算する基礎としては使用されません。
- 優先権が主張されている出願が、パリ条約の締約国またはWTO加盟国いずれの国に提出されたものでもなかった場合、
- 国際出願が優先期間満了の2カ月を経過した後に提出された場合、または
- 優先権書類に先の出願が提出された日付と国名および/または官庁名に関して場合により要求される詳細情報が含まれていなかった場合。
しかしながらPCT規則26の2.2(c) に従い、優先権は以下の理由だけでは無効とはみなされない点にご留意ください。
- PCT規則4.10(a)(ii)に定める先の出願の番号の記載が欠如している場合、
- 優先権主張の記載が優先権書類に記載されている対応する記載と整合性がない場合、または
- 国際出願日がその優先期間の満了した日から2カ月の期間内であることを条件として、国際出願の国際出願日が優先期間が満了した日より後である場合。
ISAおよびIPEAに関する限り、一般的に優先権の有効性に関して調査を行うことはありません。ただし、例えば審査官が発見した文献が、先行技術を構成できるが主張された優先日以降かつ国際出願日以前に公表されたものである場合には、審査官は主張された優先日の有効性を考慮する必要があります。
審査官が優先権主張は無効であると認めた場合は、審査官は国際出願日(または他の有効な優先権主張の最先日) を場合によっては、見解書または国際予備審査報告書を作成する際の基準日として使用します。そして見解書または報告書の第II欄に反映します(国際調査および予備審査ガイドライン6.06項参照)。
ISAまたはIPEA自体が優先権主張の無効を宣言することはありませんし、ISAまたはIPEAの見 解書もしくは報告書は国内段階では拘束力を持たないことにご留意ください。国内段階では指定官庁(DO) は、優先権主張は国際段階での目的において無効であるという国際段階でなされた宣言を見直することができる点にご留意ください。DO は、出願人が先の出願を提出したのと同じ出願人 であるかどうかを確認し、そうでない場合または出願人の氏名が変更された場合には、先の出願の優先権を主張する出願人の権利を証明する書類を請求することができます (PCT規則51の2.1(a)(iii)) (ただし、PCT 規則4.17(iii) に基づく申立てが正しくなされている場合は不要です)。DOは、クレームに記載された主題事項(subject matter) が先の出願に含まれていたかどうかなどの実体審査中に、パリ条約に従って優先権主張の有効性を点検することもできます。
優先権回復の請求の詳細は、PCT Newsletter 2015年9月号の実務アドバイスを以下のリンクからご参照ください。
/pct/ja/newslett/2015/newslett_2015.pdf#page=66
またPCT出願人の手引国際段階、5.062-5.069項は、以下のリンクからご参照ください。
/pct/guide/ja/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf