PCTニュースレター 01/2015: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際調査機関の見解書で指摘された事項に応答するための非公式コメント提出に関する情報*
Q: 国際調査機関の見解書を受け、国際事務局へ非公式コメントを提出したいのですが、非公式コメントに関連する PCT 規則の情報が見あたりません。非公式コメントの提出期限及び、PCT 第 19 条に基づく説明書のように、非公式コメントに文字数の制限があるのか教えて下さいますか?また非公式コメントは国際出願と共に公開されますか?今後もし国際予備審査請求書を提出する場合、非公式コメントは国際予備審査機関へ送付されますか?
A: 2002 年 9 月に開催された第 31 回PCT同盟総会にて、国際調査機関(ISA)による新しい形式の見解書の作成に関するPCT規則が採択されました。同盟総会は、出願人がISA見解書に応答するための特別な規定を規則に含まない旨を同意しました。ISA見解書に対する公式な応答は、国際予備審査手続きの一部としてPCT第34条に基づき、国際予備審査機関(IPEA)へ提出される必要があります。しかしながら、国際予備審査請求書が提出されない場合には、出願人は国際事務局(IB)へ非公式ベースでコメントを提出することにより、ISA見解書に対し反論の機会を得ます。そのような非公式コメントはその後、指定官庁へ送付され、さらにPATENTSCOPEにて閲覧可能となります。非公式コメントである故に、PCT規則には関連する情報がありませんが、PCT出願人の手引 国際段階の概要のパラグラフ 7.030(http://www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf)にいくつか情報があり、また関連するPCT同盟総会文書には有用な背景情報がございます1。
非公式コメントを提出する特別な期限はありませんが、当該コメントを提出できるもっとも早い時期は ISA 見解書の作成後であり、優先日から 28 ヶ月の期間内に提出すれば、当該コメントは国内段階移行時に指定官庁で利用可能となります。優先日から 30 ヶ月を過ぎて受理された非公式コメントは、単に IB の一件書類に保存されるだけで、PATENTSCOPE には掲載されず(期限満了後にIBへ提出された他の文書と同様)、指定官庁へも送達されません。国内段階手続きにおいて、何れかの指定官庁が ISA 見解書に対するコメントを考慮するよう希望するのであれば、当該コメントは直接各官庁へ提出する必要があります。非公式コメントの言語に関しては、何れの言語の非公式コメントも IB は指定官庁へ通知(複数言語の場合もあり)し、何れの指定官庁も、該当する場合には、当該コメントの翻訳を要求することができます。
PCT第 19 条に基づく請求の範囲の補正に関する説明書の 500 語を上限とする要件(PCT規則 46.4)とは異なり、非公式コメントには文字数の制限がありません。また、PCT第 19 条に基づく補正とは異なり、非公式コメントは国際出願と共に公開されませんが、国際公開日後にPATENTSCOPE("書類"タブから)にて閲覧可能となります2。非公式コメントは、ISAに送付されず、国際予備審査請求書が提出された場合はIPEAにも送付されません。
非公式コメントは ePCT システム(https://pct.wipo.int/ePCT)の"ドキュメントアップロード"機能を利用して IB へアップロードすることができます。本機能の利用には、基本的なWIPO ユーザアカウントを作成し ePCT パブリックサービスを利用することででき、電子証明書でユーザアカウントの認証をする必要はありません。或は、非公式コメントを次の FAX番号へ送付することも可能です:+41 22 338 82 70
もし国際予備審査請求書を提出し、非公式コメントとして IB へ送付したコメントを IPEAに考慮してもらいたいのであれば、国際予備審査手続(第 II 章)の一部として、PCT 第 34条に基づき IPEA へ直接再提出する必要があります。この場合、混乱を避けるため、"非公式コメント"という表示は削除し、コメントには第 II 章の目的のための答弁書である旨を表題に含むことを確認してください。第 II 章の見解書に対する答弁書の提出のための正式な手続きに関する情報としては、IPEA に対して複数の補正や抗弁をすることができますし、また IPEA に口頭で連絡することも可能です。詳細は PCT 規則 66.2 から 66.6 及び 66.8 をご参照ください。国際予備審査請求書が提出されれば、非公式コメントは指定官庁へは転送されませんが、PATENTSCOPE では閲覧可能です。
該当する場合、PCT 第 19 条に基づく説明書と補正書を共に提出することで、及び/または、国際予備審査請求をし PCT 第 34 条に基づく補正書を提出することで、ISA 見解書で指摘された事項に応対すれば、より強力な特許を得られるかもしれません。19 条補正の提出は非公式コメントの提出への追加という形でできますが、異なる形式の提出であることを明確に区別するよう注意してください。上記に述べたように、国際予備審査の目的のための非公式コメントの内容の提出を希望であれば、第 II 章の目的のためであると明確にし IPEA へコメントを再提出する必要があります。
欧州特許庁(EPO)によりすでに調査された先の出願に基づく優先権を主張して受理官庁としての EPO へ提出された国際出願で、EPO が ISA として選択された場合においては、国際出願と共に先の出願に関して EPO へ非公式コメントを提出することが可能です。必要な要件を満たせば、国際調査を担当する審査官は非公式コメントを考慮するでしょう。"PCTDirect"として知られるこの手続きは、上記で議論される PCT の通常の非公式コメントと混同されませんようご注意ください。(PCT Direct の詳細は、PCT Newsletter 2014 年 11 月号の 4 ページをご覧ください。
* PCT Newsletter 2015 年 1 月号に掲載された実務アドバイスの誤植:国際調査機関の見解書で指摘された事項に応答するための非公式コメント提出に関する情報
PCT Newsletter 2015 年 1 月号に掲載された国際調査機関(ISA)の見解書に対する非公式コメントについての "実務アドバイス" に関する訂正があります。優先日から 30 ヶ月を過ぎて国際事務局(IB)により受領された非公式コメントは、"単に IB の一件書類に保存されるだけで、PATENTSCOPE には掲載されず(期限満了後に IB へ提出された他の文書と同様)"と記載がありました(当該記事の回答の 2 段落目を参照)。
国際出願の国際段階は優先日から 30 ヶ月後に終了しますが、そのような非公式コメントはPATENTSCOPE に掲載されますのでご注意下さい。しかしながら、当該コメントは"ISA の見解書に対する非公式コメント"ではなく"出願人との通信"と表示されます。他の文書や書類、例えば PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の記録の要請なども、IB は当該要請に対し何ら手続きを行うことができませんが、必要に応じ、文書/書類が期限満了後に受領されたことを表示し、その期限後でも PATENTSCOPE で閲覧可能となります。