特許協力条約 (PCT) の紹介
PCT制度の出願人
PCT締約国の国民又は居住者であればPCTに基づく国際出願 (「PCT出願」) を行うことができます。PCT出願に複数の出願人がいる場合は、そのうちの1人がこの条件を満たしている必要があります。
PCT出願の提出先
PCT出願は、PCT出願を受理する権限を有す管轄特許庁 (PCTの「受理官庁」) に提出します。ほとんどの場合、出願人が国籍又は住所を有す国の特許庁が受理官庁となります。
PCT締約国の出願人はまた、WIPO国際事務局にPCT出願を提出 することができます。一部の国の出願人は、PCT出願を国際事務局に提出する前に、国家安全保障上の許可の取得が必要になる可能性があります。
PCT出願の提出にかかる手数料
PCT出願を提出する際には、次の3種類の手数料を受理官庁に支払う必要があります。
- 国際出願手数料: 現在1,330 スイスフラン (用紙の枚数が30枚を超えると超過分が加算され、電子出願すると減額が適用される可能性があり、一部の締約国の出願人は減額措置の対象となる)
- 調査手数料 (選択する国際調査機関によって異なる)
- 送付手数料 (受理官庁によって異なる)
管轄受理官庁に対して、上記の3種類の手数料を全て、当該受理官庁が認める通貨と支払方法でお支払いください。手数料の正確な金額を確認するには、現行のPCT手数料表 [PDF]を参照してください。

PCT手数料表
PCT手数料の金額を各受理官庁の通貨で表示した手数料表
PCT出願の提出方法
一般的に、PCT出願では、国内の特許出願とほぼ同じ内容のデータが必要です。PCT出願には、以下の全ての要素が必要です。
- 願書 (出願人の書誌情報を含む)
- 明細書 (発明の開示)
- 請求の範囲 (保護を求める発明の範囲を明示)
- 図面 (必要な場合)
- 要約 (発明の概要)
出願人は受理官庁により認められている言語のいずれかの言語でPCT出願を行うことができます。出願の言語が国際調査機関 (ISA) が認める言語ではない場合には、当該ISAが認める言語の翻訳文を提出する必要があります。

ePCT – PCT制度オンラインサービス
PCT出願の出願と管理にePCTを利用できます
PCT手続
PCT出願が受理されると、受理官庁により方式審査が行われます。次に「国際調査」が行われ、調査の報告と特許性に関する見解が出願人に提供されます。出願はその後「国際公開」によって公開されます。出願人はまた、「国際予備審査」を任意で請求して審査報告を取得することができます。その後出願人は、各国の国内官庁が特許付与の審査を行うために出願を処理する「国内段階」に移行するかどうか、移行するのであればどの国に関して移行するかを決定します。
これらの手続の詳細については、以下をご覧ください。
受理官庁はまず、出願に対して国際出願日を認定できるかどうか審査するために、PCT出願の出願人の資格に関する要件と、PCT出願に必要な要素に関する要件 (PCT第11条(1))が全て満たされているかどうかを確認します。さらに、その他のPCT方式要件 (PCT第14条 及び規則11) が全て満たされているかどうか、また、所定の手数料が全て支払われているかどうかを確認し、必要な場合は、欠陥の修正 (補充) や不足分の手数料の支払いを出願人に促します。
PCT出願の際に選択された国際調査機関 (ISA) が国際調査報告 (発明の特許性に影響を与える可能性のある公開特許文献及び技術文献を特定) 及び発明の特許性に関する詳細な分析がPCTで定められる基準に従って提供される見解書を作成します。出願人は出願から約4か月後に国際調査報告及び見解書の写しを受け取ります。国際調査報告の調査結果や見解は、発明の特許性に関して出願人及び国内官庁に有用な情報を提供しますが、指定された国内官庁に対して拘束力を持つものではありません。
WIPOは、優先日から18か月経過後速やかに、PCT出願を国際調査報告と共にPATENTSCOPE上で公開します。PATENTSCOPEはWIPOが提供する特許文献データベースです。出願の公開後も、出願人は国際調査報告の内容に基づいて特許取得可能性を検討し、出願手続をさらに進めるかどうか判断するための時間を確保することができます。
国際予備審査は、出願人の請求 (任意) により、国際予備審査機関 (IPEA) が出願について追加で特許性の評価を行う手続です。出願人はこの手続の中で (国際調査報告及び見解書の内容を踏まえて) 出願を補正し、補正後の出願を審査するようIPEAに請求できます。
国際予備審査の結果、PCTで定められる基準に基づく発明の特許性に関する見解が、特許性に関する国際予備報告として出願人に提供されます。国際予備審査の請求には別途手数料がかかります。この報告は国際調査機関の見解書と同様に拘束力を持つものではありませんが、出願の特許性に関して追加又は最新の分析を提供することで、国内段階に移行するかの判断に役立つ可能性があります。
PCT手続の中で、最終的な特許付与は、国内段階において各国の国内官庁が行います。所定の期間内 (通常は優先日から30か月以内) に国内段階に移行しなかった場合、そのPCT出願は失効し、国内官庁に対する効力を失います。このため、国内段階への移行の期限が過ぎる前に、出願を続行するか否かと、続行するのであればどの国に移行するかを決定することが重要です。
出願を続行する場合、所定の期間内に、移行先のそれぞれの国の国内 (又は広域) 官庁に対して所定の手続をとる必要があります。これには通常、当該国内官庁が認める言語によるPCT出願の翻訳文の提出と所定の手数料の支払い、また現地の代理人の選任が含まれます。この後、国内官庁によって出願の実体審査が行われ、特許付与に関する決定が下されます。
PCT制度のメリット
PCT制度を利用した特許出願には、多くのメリットがあります。
まず、PCT出願は、複数の国で個別に国内出願を提出する場合と比べて、簡便な出願方法です。なぜなら、PCT出願の出願書類一式を提出するだけで、全てのPCT締約国で国内出願を行ったのと同じ法的効果を得ることができるからです。
次に、PCT制度では、出願人が国内官庁に対して出願を続行するかどうかを判断するための時間的猶予が与えられます。
さらに、発明の特許性に関する専門家による見解が出願人に提供されるため、出願人は出願手続の中でより多くの情報に基づいて判断を行うことができます。
最後に、PCT制度を利用することで、多数の国で特許保護を求める際に出願人が負担する労力と余計な費用を節約できます。

PCTサクセスストーリー
PCT制度を活用して発明の特許保護を出願した企業や発明者のサクセスストーリー
PCTに関する詳細情報

PCTに関するよくある質問 (FAQ)
外国における発明の保護: 特許協力条約 (PCT) に関するFAQ

PCT出願人の手引
PCT手続に関する詳細な手引と全てのPCT官庁及び機関に関するPCT参照データ

Learn the PCT (PCTを学ぶ) ビデオシリーズ
PCTについてトピックごとに解説する講義動画

PCTディスタンスラーニングコース (遠隔学習)
WIPOの遠隔学習プログラムで提供されるPCT講座
PCT制度に関するお問い合わせ
WIPOのPCTインフォメーション・サービスの担当チームが、PCT制度全般や法的事項に関するご質問にお答えし、PCT制度のご利用を様々な側面で支援します。
電話によるお問い合わせ: +41 22 338 8338 (受付時間: 月曜から金曜の午前9時から午後6時 (中央ヨーロッパ時間))