大阪・関西万博 国連パビリオンにてWIPO GREENを紹介 ―グリーン・イノベーションの推進に向けて ―

大阪・関西万博の閉幕が近づく中、世界知的所有権機関(WIPO)は再び国連パビリオンと協力し、環境技術の移転を促進するWIPO GREENデータベースを活用した地球規模課題への取り組みを紹介しました。本イベントでは、WIPO GREENパートナーが最先端のグリーン技術を紹介しつつ、地球規模の課題の解決に資する持続可能なイノベーションの重要性を解説しました。

10月7日・8日の2日間にわたり開催されたイベント「WIPO GREEN: Connect, Expand, and Deploy」は、WIPOと国連パビリオンの共催によるもので、知的財産を活用して持続可能な技術を推進する意義を再確認しました。WIPO GREENデータベースに登録された技術の事例紹介を通じ、世界各国から参加した来場者は、気候変動の緩和や適応に向けた革新的な技術について理解を深めました。

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(写真: OYAMA Yoshinari/WIPO)

10月7日 第1パネルディスカッション

スタートアップ、大手建設会社、特許情報コンサルティング会社の代表が登壇しました。

GSアライアンス株式会社

バイオマス(WIPO GREEN 149184)、バイオエタノール(WIPO GREEN 10753)、量子ドット有機肥料(WIPO GREEN 175850)などの環境技術を紹介しました。同社はこうした最先端技術をWIPO GREENデータベースに登録し、共同研究や投資の機会を模索しています。最近では、スイスのイノベーションパークと連携し、ブラックマスを原料としたリサイクル型リチウムイオン電池(WIPO GREEN 171999)の開発も進めています。森CEOは「WIPO GREENは無料で使いやすく、特に海外のパートナーを求めるスタートアップにとって大きな潜在性を備える有用な情報源」である旨述べました。

鹿島建設株式会社

鹿島建設は、CO₂排出削減につながる革新的なセメント(WIPO GREEN 156479)を開発し、万博では同セメントを用いたドーム構造を展示しています。同社は、アジア開発銀行から表彰されたフィリピンでのサンゴ礁再生プロジェクト(WIPO GREEN 175227)についても紹介しました。櫻井 知的財産部長は「WIPO GREENを通じて環境技術を世界へ広げ、地球温暖化抑止に貢献したい」と強調しました。

株式会社イーパテント

特許情報分析のコンサルティング会社であるイーパテントは、WIPO GREENデータベースの使い方を分かりやすくデモンストレーションし、参加者の関心を惹きました。野崎CEOは、14万件以上の技術情報が登録されているWIPO GREENを「グリーン技術の宝庫」と紹介しました。

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(写真: OYAMA Yoshinari/WIPO)

10月8日 第2パネルディスカッション

3つのWIPO GREENパートナーが、国境を越えた技術普及の取り組みを紹介しました。

ダイキン工業株式会社

ダイキン工業からは、従来の冷媒R410Aに比べ地球温暖化抑制に貢献する冷媒R32(WIPO GREEN 9594)を用いた空調機器に関する取組みが紹介されました。同社は、冷媒R32を用いた空調機器に関する一群の特許権の不行使を宣言しています。「特許は独占権行使のためだけでなく、グリーン技術を世界に広める手段にもなる」と阿部 知的財産部長は語りました。

株式会社明電舎

明電舎は、温室効果の高いSF6ガスを使用しないエコタンク形真空遮断機(WIPO GREEN 146421)を紹介し、環境負荷が低く、極寒環境でも安定稼働する点を強調しました。渡部 知的財産部主任は「WIPO GREENを通じてこの技術をさらに広め、地球温暖化抑制に寄与したい」との強い思いを語りました。

公益財団法人 地球環境センター(GEC)

開発途上国における技術移転や人材育成など、地球環境保全に向けた同センターの取り組みを紹介し、イベントを締めくくりました。南課長は「途上国の深刻な環境問題には国際的な技術協力が不可欠」である旨述べました。

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(I写真: OYAMA Yoshinari/WIPO)

2日間のイベントを通じて、250名を超える方々が集まり、次世代のイノベーターを含む多様な世代が熱心に耳を傾けました。その積極的な参加は、地球規模の気候変動に対応するために、グリーン・イノベーションを支援することの重要性を改めて浮き彫りにしました。WIPOは今後も、知的財産とイノベーションの力を活かし、持続可能でより良い未来の実現に向けた取り組みを進めてまいります。


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WIPO Japan Office

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