― SDGs達成に向けた官民連携とアフリカのニーズを共有 ―
2025年8月20日、国連人口基金(UNFPA)とWIPO日本事務所(WJO)との共催により、UNFPA本部およびアフリカ各国事務所の代表と、日本企業との意見交換会が横浜にて開催されました。
本会議は、アフリカにおける深刻な保健衛生の課題に対し、UNFPAが現場で直面している具体的なニーズを共有し、日本企業が有する先進技術・知財シーズを結び付けることを目的として開催されました。冒頭では、UNFPA西・中央アフリカ地域局長のセネン・フントン氏より、命を守り若者に未来を拓くためには、官民連携がこれまで以上に重要であり、本会議が「骨太」スピリットに基づき新しく創造的なアイデアを生み出す契機となることを期待する旨述べました。また、WIPO日本事務所の澤井智毅より、知的財産が技術を世界に広める「パスポート」として果たす役割を強調し、アフリカのニーズと日本企業の技術シーズを結びつける重要性を説明しました。さらに、WIPO GREEN日本アンバサダーの山本雅史氏は、WIPO GREENを通じて日本企業の技術を国際社会の課題解決に活かす重要性を紹介し、本会議がアフリカのニーズと技術を結び付ける絶好の機会になることへの期待を示しました。
アフリカ各国の具体的ニーズと事例紹介
UNFPAマダガスカル事務所代表兼コモロ・モーリシャス・セイシェル事務所 所長のジョシアンヌ・ヤギブ氏は、マダガスカルやナイジェリアで依然として高い母体死亡率が続く現状を紹介し、医療機器やドローンなどの技術支援や、デジタルツール・衛生設備・教育の整備が不可欠であると述べました。UNFPAエチオピア事務所代表のコフィ・コウアメ氏は、吸水型生理用ショーツの現地生産で女性の社会・経済的エンパワーメントに貢献した伊藤忠商事とのパートナーシップを紹介し、医療機器やモバイル診療車、清潔な水・電力設備などの支援分野を示しました。また、UNFPAコンゴ民主共和国事務所代表のマディ・ビャイ氏は、遠隔地や紛争地での医療提供を改善していることを報告し、教育やジェンダー平等、平和構築にも寄与する拡大計画を発表、さらにUNFPA公共資金・資金調達部部長のクラウス・シモーニ・ペダーセン氏は、民間企業との連携や革新的ファイナンスの重要性を強調しました。
日本企業の取組紹介
会議では、アフリカ現地の課題に応える日本企業各社の具体的取り組みが紹介されました。
栗田工業株式会社は水処理技術を活用した支援や国際パートナーシップを通じた水資源管理の事例を報告し、コニカミノルタ株式会社はワイヤレスX線システムなど医療アクセス改善の製品と、南アフリカでの植樹や学校への寄贈活動を紹介しました。ダイキン工業株式会社は空調事業や技術者育成、森林保全活動を紹介するとともに、WIPO GREENを通じた官民連携の重要性を強調しました。ユニ・チャーム株式会社は衛生用品の生産・提供事例や西・南アフリカへの事業展開計画を示し、女性の生活向上や教育・労働機会拡大への貢献を説明しました。LIXIL株式会社は衛生事業を通じた生活改善の取り組みや現地製造拠点、IPライセンスを通じたパートナー協働の重要性を、さらに、IP*SEVA日本事務所からは各地域での技術とニーズの結び付ける支援を紹介しました。
各社の発表を通じ、衛生用品の現地生産、医療機器の提供、デジタル技術の活用、モビリティや水資源技術の導入など、多様な取り組みが具体的に共有され、アフリカ各地の衛生保健課題解決への貢献が期待されました。
本会議を通じて、UNFPAと日本企業との間で新たな連携の可能性が見出され、今後の協働に向けた契機となりました。WIPO日本事務所は、今後も知的財産を通じて国際的な課題解決に貢献し、持続可能な未来社会の実現を目指します。