昆虫由来のドッグフードブランド、Jaiklaのグローバルな可能性を解き放つ

名称にはどんな意味があるのでしょうか? タイの恐れを知らない昆虫由来のドッグフードブランド「Jaikla」をご紹介します

「Jaikla」。タイ語で「恐れを知らない」という意味をもつこの名称は、ブランドにも、共同創業者のIttikorn “Dhong” Thepmani氏にもよく似合っています。2018年、Dhong氏は金融アナリストとしてのキャリアを捨てて、世界のペットフード業界を変革するという使命を胸に、昆虫の養殖事業に乗り出しました。

犬の隣で地面にあぐらをかいて座るDhong氏の写真。緑色の熱帯植物を背景にして、手前には、当初「Laika」ブランドで販売されていた犬用おやつのパッケージが2袋置かれています。
(写真: JAIKLA Team)

バンコクに拠点を置くOrgafeed Limited Company (以下「Orgafeed社」) は、昆虫由来のタンパク質を使用した持続可能なドライドッグフードを開発しており、完全栄養食のドッグフードシリーズの発売開始を間近に控えています。従業員はわずか8名と小規模かもしれませんが、その志は高く、成功への道筋を確かなものにするために、世界知的所有権機関 (WIPO) のマドリッド制度を通じて世界約40の市場で「Jaikla」という名称を登録しました。

犬のための持続可能な昆虫由来タンパク質の開発

Dhong氏がペットフード事業に行き着いたのは偶然ではありません。きっかけは調査でした。証券会社で金融アナリストとして勤務し、投資戦略を構築してファンドマネージャーに提案する仕事をしていた彼は、国連食糧農業機関 (FAO) が発表した世界の食糧供給の将来に関する報告書を目にしました。

タイで食料危機が起こるという考えは、当初、Dhong氏にはかなり荒唐無稽に思えました。「タイでは、どこへ行っても24時間いつでも食べ物が手に入ります。そこでFAOの報告書の根拠となる数字を詳しく調べたところ、辻褄は合っていました。とはいえ、危機が予見されていて解決策を開発する時間があるのであれば、高い投資収益を生み出すことができます。」

FAOの報告書は、この世界的な問題に対する2つの解決策の候補として、植物由来タンパク質と昆虫由来タンパク質を挙げていました。

「ここタイでは、昆虫由来タンパク質に明らかに大きな可能性が見込めました。植物由来タンパク質はどの国でも生産できますが、タイは熱帯に位置しているため、昆虫養殖において、温帯の国々にはまねのできない自然かつ持続的なコスト優位性があります。この優位性は、誰にも奪うことはできません」とDhong氏は語ります。

データが、あるアイディアを示唆していました。熱帯の太陽が彼に優位性をもたらし、そして、生来の犬好きであったことがこの事業を成功に導く決め手となったのです。

Dhong氏は仕事を辞め、本人が笑いながら言うところの「昆虫農家」になりました。

持続可能なドッグフード供給を支える昆虫養殖

Orgafeed社が築き上げたものは、単なるペットフードブランドではありません。循環型経済そのものです。

食品回収活動の一環として、市場から余ったパンや農産物を回収するOrgafeed社のチームメンバー。
(Ph写真oto: JAIKLA Team)

 

  1. 同社は、スーパーマーケットで売れ残ったり賞味期限が近づいたりして廃棄される食品余剰物で飼育が可能なアメリカミズアブの幼虫を養殖しています。Orgafeed社は、大手スーパーマーケットチェーン2社から、 (本来であれば埋め立て処分されるはずの) 余剰物を回収し、自社の車両で農場まで運びます。
  2. 幼虫は余剰物を食べ、そこに含まれるタンパク質、脂肪、炭水化物、ミネラル及びビタミンを吸収します。その後、昆虫粉末に加工され、これがJaiklaドッグフード製品の主原料となります。
  3. 加工後残留物である有機物は肥料となり、地元の農家に提供されます。農家はその肥料を利用して新鮮な農産物を育て、同じスーパーマーケットに卸すのです。

Orgafeed社は、タイの実績のあるペットフードメーカーと協力して最終製品を生産しています。これは、成長市場で迅速に事業を進め、確固たる足場を築きたい小規模企業にとって現実的な決断です。

手前には淡いベージュ色の昆虫由来タンパク質粉末が入ったガラスのボウルが写っており、背景には乾燥昆虫が入ったボウルがぼかされて写っています。
(写真: JAIKLA Team)

ドッグフードのブランド名をLaikaからJaiklaに変更

Jaiklaは、当初からJaiklaという名称だったわけではありません。

7年前に設立された同社は、最初の2年間を研究開発に費やし、ペット栄養士と緊密に連携しながら開発を進めました。「私たちは市場に新しいタンパク源を導入しようとしていました。そのため、製品が基準を満たしていること、つまり清潔で安全で、ペットにとって良いものであることを証明する必要がありました。」2年を経て、ブランド「Laika」を発売する準備が整いました。この名称は、地球の軌道を周回した最初の動物となった旧ソビエト連邦の犬にちなんだものです。

気の利いた名称ではありましたが、Dhong氏が後に知ることになるように、問題もありました。

「例えば、製品を欧州に輸出したいと考えていましたが、「Laika」という名称は、欧州の複数の国ですでに商標登録されていました。」Dhong氏とそのチームには、商標を使用する権利を買い取るか、ブランド名を変更するかという2つの選択肢がありました。資金が限られた若い企業にとって、取るべき道は明らかでした。彼らは、名称変更する道を選び、新しいブランド名を「Jaikla」としたのです。

この経験では、時間、法的協議、ブランドアイデンティティの変更に伴う混乱など、少なからぬ代償を払うことになりました。「初心者ならではの失敗でした」とDhong氏は率直に語ります。「事前に商標の問題について知識があれば、多くの問題を回避することができたはずです。最初から、もっと強い商標を考案することができたはずです。」

結果としては、「Jaikla」という名称が同社にとって有効に機能し、競争の激しい市場でブランドの存在感を際立たせることに成功しています。「タイのペットフード市場は競争が非常に激しく、毎年新しいブランドが登場しています。国際市場では競争がさらに激しくなるであろうことも承知しています。それでも、私たちは自信を持っています。ペットフード業界は着実に成長していますし、我が社は必要な資金も確保できており、さらには強力なグローバル商標保護も獲得できています。」

JAIKLA logo. 商品パッケージの前に並べられた、丸く茶色いJaiklaの犬用おやつのクローズアップ。
Jaiklaのロゴには犬の鼻が描かれています。同じ鼻のモチーフが、犬用ビスケットにも型押しされています。細かい部分ではありますが、これこそが同社の姿勢を雄弁に物語っています。同社は、製品に刻まれる模様に至るまで、知的財産と模倣品対策に細心の注意を払っているのです。 (写真: JAIKLA Team)

WIPOの国際商標制度との出会い

ブランド名の変更を進めるに当たり、Orgafeed社はタイ知的財産局 (DIP) に相談しました。そこで同社が初めて知ったのが、WIPOの国際商標登録制度であるマドリッド制度です。この制度を利用することで、Orgafeed社は1つの出願によって複数の輸出市場でJaiklaを保護することができることになります。

Dhong氏にとっての最終的な決め手となったのは、採算性でした。投資評価の訓練を受けてきたDhong氏は、自ら具体的な数字を弾いてみました。法律事務所を通じて国ごとに商標出願を行う場合、マドリッド制度を利用する場合の少なくとも3倍から4倍の費用がかかるであろうと見積もりました。

「金融アナリストだったときの習性から、最も高い投資収益を得られる方法を考えてしまいます。マドリッド制度は費用面で競争力が勝るだけでなく、ワンストップの解決策でもあるということがわかりました。」

言語面の利点もありました。マドリッド制度を利用すれば、使用する言語は1つ (英語) だけで済みます。法制度も言語も異なる数十の市場で登録を管理する上で、これは実務上の大きな利点でした。

1件の国際商標登録で約40の市場における保護を実現

DIPの職員指導の下、Orgafeed社は意欲的に国際商標出願を行い、オーストラリア、カナダ、中国、欧州連合、日本、マレーシア、ニュージーランド、大韓民国、シンガポール、英国、米国など、約40の市場を当初から指定しました。

市場は戦略的に選択され、その中には、世界有数の成熟したペット市場 (欧州及び米国) に加え、成長目覚ましい新興市場も含まれていました。

特筆すべきは、指定した全ての市場で保護が認められたことです。

天然材料のご褒美おやつやビタミン入りおやつのJaikla製品のパッケージの横に、犬が足をちょこんと置いている。  
(写真: JAIKLA Team)

Dhong氏は、この結果にはLaikaの経験から得た教訓も生かされていると考えています。「事業拡大の途中で名称の抵触が判明するという苦い経験をしたため、我々は、Jaiklaという名称が十分に独自性を持ち、世界の輸出市場でも通用するだけの強さを備えていることを確認するため、DIPの人たちとは多くの時間をかけて検討しました。」

国際商標保護がJaiklaの成功を後押しする仕組み

複数の大陸における保護を確保した現在、Jaiklaは積極的に輸出を行っており、継続的な注文も入ってくるようになっています。

現在、同社は2つの異なる販売チャネルで事業を展開しています。

  • 国内 (タイ) : 80% ― 主にeコマースを通じた消費者への直接販売 (D2C) 、加えて約10%の企業間取引 (B2B) (ペットショップ、動物病院、卸売を含む)
  • 海外: 総売上高の20%を国際市場が占め、その全てがB2Bパートナーシップを通じたものです。

商標の安定した保護と商業上の信頼の間には、直接的な関係があります。

「国際商標保護によって海外のパートナーから信頼を得やすくなり、それがさらなるビジネスにつながっています。我が社はペット業界ではまだ新しく小規模なチームですが、国際商標保護は、我々のプロとしての格を高めてくれます。」
Dhong氏, Jaikla Team

さらに遠方の市場からも関心が寄せられ始めており、カナダからも数件の注文が入っています。しかしDhong氏は、欧米市場の難しさを冷静にとらえています。「欧州、英国及び米国でブランド認知度を高め、私たちの価値観とビジョンを共有する現地パートナーを見つけるには、十分な調査と準備が必要になると思っています。」

昆虫由来ペットフードの先駆的ブランドが目指す次の展開

当面、Orgafeed社は引き続き主に東南アジアに注力する方針です。この本拠地周辺地域では、ペットを飼う人が急速に増えており、文化的な親和性という自然な強みもあるのに加えて、まだ十分に開拓されていない大きな可能性がある、と同社は考えています。

さらなる遠方への事業展開のために、Dhong氏は、国際商標登録の地理的範囲をフィリピンやベトナムなど域内の他の主要輸出市場へも拡張することについて、調査・検討を行う予定です。

Jaiklaの製品ラインナップも拡大を続けており、今年の後半には、総合栄養食のドッグフードのフルラインナップを発売する予定です。キャットフードのラインナップも、同社の長期的なプロジェクトに含まれています。

Jaiklaのグローバルな商標戦略の教訓

タイ国内外の他の小規模事業者に対するDhong氏の助言は明快です。「強い名称を選び、それを国際的に保護することが、他の輸出市場での基盤を築くことに役立ちます。」

Dhong氏は、Jaiklaを成功へ導いた道のりについて、成功だけでなく失敗も率直に語ります。Laikaの一件は苦い経験でしたが、そこから価値あるものが生まれました。つまりOrgafeed社は、強いブランド名を選び、それを国際的に保護することが、単なる事務手続上の後付けではなく、事業の土台であると実体験を通じて理解した企業なのです。

Jaiklaのグローバルな基盤は、WIPOのマドリッド制度によって築かれました。タイのDIPの支援を受けて1件の国際商標出願を行い、国ごとに出願する場合の数分の1の費用で、約40の市場における商標保護を実現しました。限られた資源で事業を行う8人のチームにとって、この効率性は単に便利というだけではなく、国際展開の決め手となったのです。

「マドリッド制度のおかげで、私たちは製品を輸出し、世界のペットフード分野に持続可能性をもたらすという夢を実現しています。」
Dhong氏, Jaikla Team

Orgafeed社の国際商標登録についての詳細については、こちらをご覧ください。

マドリッド制度について

マドリッド制度は、単一の言語による単一の出願を提出し、単一の通貨で一括して手数料を支払うことで、130を超える国で商標を登録することができる、便利で費用対効果の高いソリューションです。

クイック リンク