失くしたものが見つかる

持ち物の置き忘れや紛失はどこでも誰にでも起き得ること。古くからのこの問題を解決しようと、東京にあるスタートアップ企業MAMORIO株式会社は、持ち物がどこにあるかが分かるトラッキング・タグとアプリを開発しました。

東京にあるスタートアップ企業MAMORIO株式会社は、持ち物がどこにあるか分かるトラッキング・タグとアプリを開発しました。(Photo: © Courtesy of MAMORIO, Inc)

MAMORIO株式会社は2012年の設立以来、「なくすを、なくす」をミッションに、持ち物の紛失防止をサポートする使いやすい製品を開発してきました。また、ディズニーやソニー等大手企業とも提携して様々な製品やサービスを提供し、存在感を高めました。

MAMORIOの仕組みは、持ち物につけられたトラッキング・タグをBluetoothを介してスマートフォンとペアリングさせるというもの。タグがつけられた持ち物がスマートフォンから離れて電波が検知されなくなると、スマートフォンにプッシュ通知が送られます。デザイン、機能、ブランド戦略が同社の成功を導きました。

MAMORIO株式会社は、知的財産(IP)制度を有効活用し、独自技術を保護すると共に、ブランディングキャンペーンを成功させてのれんを築きあげました。会社設立から約10年を経て、同社は確固としたIPポートフォリオを構築し、この分野におけるリーダーとなっています。

MAMORIO株式会社の製品は、スマートトラッキング・タグとスマートフォンをBluetoothを介してペアリングさせます。タグがつけられた持ち物がスマートフォンから離れて電波が検知されなくなると、スマートフォンに通知が送られます。(Photo: © Courtesy of MAMORIO, Inc)

MAMORIOのトラッキング・タグはシンプルでスマートな外見をしています。サイズは世界最小級で、荷物札のような形のタグに穴が開いているため、鍵など、置き忘れの多いものに取り付けられます。ユーザーはタグの形が一目で分かり、同社のブランド戦略にも寄与しています。

また、スマートフォンのGPS機能を使う独自のアプリを開発し、タグが最後にいつどこにあったかをユーザーに伝えられるようにしました。このように製品の機能を「アップグレード」したことで、MAMORIO株式会社は他社を引き離しています。

ユニークで忘れられないブランド

MAMORIO株式会社は、製品やサービスへの投資をIPとして保護する価値をすぐに認識しました。同社は2014年には、日本特許庁(JPO)に初めて「MAMORIO」ブランドの商標出願を行いました。その後も、新製品開発を進める中で追加の商標出願を行っています。

MAMORIO株式会社は商標の他にもIP制度を活用しています。同社は独自の通知システムを活用して、特許取得済みの「クラウドトラッキング」システムと「MAMORIO Spot」を開発・提供しました。これら二つは共に、同社のトラッキング・タグの中でも最もユニークな特徴となっています。

「クラウドトラッキング」システムはIoT(Internet of Things モノのインターネット)を活用して、アプリのユーザーを「捜索者」にするシステムを作り上げました。クラウドソーシングのコンセプトに基づいて、タグのついた遺失物のそばをMAMORIOの別のユーザーが通り過ぎると、その位置情報が自動的にクラウドを経由して遺失物の所有者に送られます。MAMORIOのユーザー数が増えるほど、その効果は大きくなります。

技術はスタートアップ企業にとって重要な柱です。ビジネスパートナーと新しい技術や取り組みを開発する際、知的財産があれば交渉や企業の技術力を使用したその他の活動が円滑に行えるようになります。

増木大己 株式会社MAMORIO代表取締役
MAMORIO 株式会社は独自の通知システムを活用して、特許取得済みの「クラウドトラッキング」システムと「MAMORIO Spot」を開発・提供しました。

「MAMORIO Spot」の機能も同様ですが、人通りの多いところでユーザーの信号を受信するアンテナを備えています。東京都内の複数の鉄道駅には既にMAMORIO Spotの専用アンテナが設置されています。ユーザーをつなげるサービスを提供することで、同社はブランドアイデンティティをさらに確立し、顧客ロイアリティを高めています。

今が未来

潜在的な市場を想定するということも重要な役割を果たしました。MAMORIOの成功を受けて、同社は同じ技術に基づいて他の製品も開発しました。「MAMORIO FUDA」は、シールタイプの紛失防止デバイスで、ラップトップや大型機器の表面に貼って使えます。

また、同社は未来を見据えて他社との提携を進めています。例えば、高齢化社会の日本において、同社は製薬大手のエーザイ株式会社と高齢者を対象にしたツール「Me-MAMORIO」の開発提携を行いました。

その他には、Fanimal(迷子になったペットを飼い主の元へ返すため)や日本航空(航空機の整備用器材の位置管理のため)等との協力事例が挙げられます。MAMORIO株式会社は、IPがいかに企業の最初のアイディアを形にしてより大きな製品やサービスに発展させられるのかを示しているほか、提携やIPのライセンス供与で新たな収益源を生み出せることを示す代表的な事例であると言えるでしょう。