WIPO Arbitration and Mediation Center

紛争処理パネル裁定

Intelligent Medical Objects, Inc. 対 Lin Yin

事件番号 DPW2015-0001

1. 紛争当事者

申立人: Intelligent Medical Objects, Inc.,Northbrook, Illinois, , Unitied States of America (“US”).

同代理人:Partridge & Garcia P.C.,Chicago, Illinois, US..

被申立人:Lin Yin,“Dazhou”, “Illinois”, China.,

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名:<imo.pw> (以下「本件ドメイン名」)

本件ドメイン名の登録機関:GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.com (以下「登録機関」)

3. 手続の経過

本件申立書は、2015年1月15日にWIPO仲裁調停センター(以下「センター」)へ提出された。センターは同日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関に要請した。同年1月16日に登録機関はメールによりセンターへ登録確認の返答をし、被申立人がドメイン名登録者であることを確認し、その連絡先細目を通知した。

センターは両当事者へ2015年1月20日に英語及び日本語で手続言語について同年1月23日までに言語について示された選択肢(「申立書を日本語に翻訳し、提出する」という選択肢を含む。)のうちいずれを選択するかを回答するよう連絡をした。同年1月22日に申立人はセンターへ申立書を日本語に翻訳中であるところ、翻訳された申立書の提出期限を延期してほしい旨連絡した。同年1月23日にセンターは日本語に翻訳された申立書の提出期限を同年1月28日まで延期することを確認した。同年1月27日に申立書は日本語に翻訳された申立書を提出した。

センターは翻訳された申立書とともに提出された申立書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則(以下「補則」)に定める方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条(a)項および第4条(a)項に従い、センターは本件申立てを被申立人に通知し、2015年1月29日に紛争処理手続が開始された。手続規則第5条(a)項に従い、答弁書の提出期限は同年2月18日であった。被申立人は答弁書を提出しなかった。したがって、センターは被申立人の義務の不履行を同年2月19日に通知した。

センターは、道垣内正人を単独のパネリストとして本件について2015年2月27日に指名した。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。手続規則第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

4. 背景となる事実

申立人は、医療記録ソフトウェア会社であり、1994年以来事業を行っている。

申立人は、1999 年 6 月にアメリカ合衆国商標局に IMO の商標 (登録番号 2,453,920) を登録する出願を行い、この商標は2001 年 5 月 22 日に登録された。

また、IMO の商標は、WIPOにより2011年 6 月 7 日に国際登録 (国際登録番号 1030954)された。

そして、IMOの商標は、オーストラリア、ベネルクス、カナダ、クロアチア、エジプト、欧州連合、イスラエル、日本、モナコ、シンガポール、南アフリカ、スイス、英国などの法域で登録されており、その登録日は下記の2014年9月25日よりも前である。

本件ドメイン名は 2014 年 9 月 25 日に登録機関に登録され、その登録契約の言語は日本語であった。

5. 当事者の主張

A. 申立人

(1) 本件ドメイン名は、申立人が有する商標および役務商標 (サービスマーク)に同一または混同させるような類似性を有しているか否か

本件ドメイン名は、申立人の有するIMOの商標全体が組み込まれているため、これと同一である。

ドメイン名がドメイン名と同一または混乱を起こすほど類似しているかどうかについての判断では、トップレベル・ドメイン (「TLD」) を無視することができ、 “.pw”の部分は無視すべきである。

(2) 被申立人は、本件ドメイン名について権利または正当な利益を 有するのか否か

被申立人は申立人と一切関係や関連性を持たず、申立人は被申立人に IMOの商標の使用許諾をしていない。

被申立人は、本件ドメイン名を使用して、生々しく卑猥な画像を使用してポルノおよび性的な製品を現在および過去に販売していた。

IMOというフレーズには、このウェブサイトで販売されているポルノ製品に関連性はなく、このフレーズは被申立人の言語であろうと思われる中国語でも、登録契約の言語である日本語でも意味を持たない。これらの事実は、被申立人による本件ドメイン名の使用の正当性を弱化させるものであり、商業的使用が誠意のあるものではないとの判断を支持するものである。

被申立人は “.pw”レジストリで、「IM」と 3 番目の文字を組み込んだ<imj.pw>、<imq.pw>、<imr.pw>、<imu.pw>、<imw.pw>、<imx.pw>、<imz.pw>という一連のドメイン名を登録している。これらの登録も、被申立人が本件ドメイン名を特定の正当な目的のために選択したという論点を弱化させるものである。

“.pw”レジストリは、「Professional Web (プロフェッショナル・ウェブ)」として利用されることがあるが、被申立人のサイトで販売されている商品は、「プロフェッショナル」とはほど遠く、レジストリの悪用防止方針に違反している可能性もある。

(3) 本件ドメイン名は、不正の目的で登録かつ使用されているのか否か

方針の第 4 段(b)(iv)は、「そのドメイン名の使用により、あなたが商業的利益を得る目的のために、そのウェブサイトもしくはオンラインロケーションの、またはそれらに登場する製品・サービスの、出所(ソース)・スポンサーシップ・取引提携関係・推奨について、申立人の標章との混同の虞れを生じさせることにより、インターネットのユーザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに意図的に引き寄せるために、使用しているとき」を不正の目的による登録かつ使用の証拠として挙げており、被申立人が本件ドメイン名を使用して、生々しく卑猥な画像を使用してポルノおよび性的な製品を現在および過去に販売していたことはこれに該当する。

B. 被申立人

被申立人は、答弁書を提出していない。

6. 審理および事実認定

A. 手続問題

本件の手続における使用言語については当事者間に合意はなく、そのような場合、手続規則11条(a)によれば、パネルが別段の判断をしない限り、問題となっているドメイン名の登録契約の言語によるとされている。上記4記載の通り、本件ドメイン名の登録契約は日本語であり、上記3記載の手続の経過により申立人がセンターからの連絡に対して日本語を選択していることから、原則通り、本件の手続における言語は日本語とすべきである。

B. 実体問題

手続規則第15条(a)項によれば、「パネルによる申し立ての裁定は、ポリシー、手続規則、および適用可能と判断した法の規則や原則に従い提出された、陳述と文書に基づくものとします。」とされている。本件では、被申立人は答弁書を提出していないので、適法に提出されている申立書に基づいて認定される事実を前提に判断する。

方針第4段(a)項によれば、申立人は以下の3項目のすべてを立証しなければならない。

「(i) あなたのドメイン名が、申立人が権利を有する商標または役務商標(サービスマーク)と、同一または混同を引き起こすほどに類似しており; かつ

(ii) あなたが、そのドメイン名についての権利または正当な利益を有しておらず; かつ

(iii) あなたのドメイン名が悪意で、登録かつ使用されていること。」

(1) 本件ドメイン名は、申立人が有する商標および役務商標 (サービスマーク)に同一または混同させるような類似性を有しているか否か

上記4記載の通り、申立人はIMOの商標をアメリカ、オーストラリア、ベネルクス、カナダ、クロアチア、エジプト、欧州連合、イスラエル、日本、モナコ、シンガポール、南アフリカ、スイス、英国などの法域において正当に所有している。

本件ドメイン名は、IMOの商標と同一の文字と、 “.pw”というパラオ共和国に割当られているccTLDから構成されている。多くの先例によれば、ccTLDの部分は、この同一性・類似性の判断においては考慮しないこととされており、そうすることが妥当である。

以上のことから、本件ドメイン名は申立人が有する商標と同一であり、方針第4段(a)項(i)の要件を具備する。

(2) 被申立人は、本件ドメイン名について権利または正当な利益を 有するのか否か

申立人は、被申立人は申立人と一切関係や関連性を持たず、申立人は被申立人に IMOの商標の使用許諾をしていないこと、IMOというフレーズには、このウェブサイトで販売されているポルノ製品に関連性はなく、このフレーズは被申立人の言語であろうと思われる中国語でも、登録契約の言語である日本語でも意味を持たないこと、被申立人は “.pw”レジストリで、 “IM”と 3 番目の文字を組み込んだ<imj.pw>、<imq.pw>、<imr.pw>、<imu.pw>、<imw.pw>、<imx.pw>、<imz.pw>という一連のドメイン名を登録していること等を主張している。

また、申立人は、被申立人が本件ドメイン名を使用して、生々しく卑猥な画像を使用してポルノおよび性的な製品を現在および過去に販売していたと主張している。

これに対して、被申立人は答弁書を提出せず、したがって、申立人の上記の主張を覆す主張を何らしていないことから、上記の事実を認定することができ、このような事実は被申立人が本件ドメイン名について権利または正当な利益を有していないことを示すものである。

以上のことから、被申立人は、本件ドメイン名について権利または正当な利益を 有するとはいえず、方針第4段(a)項(ii)の要件を具備する。

(3) 本件ドメイン名は、不正の目的で登録かつ使用されているのか否か

申立人は、1999 年 6 月にアメリカ合衆国商標局に IMO の商標 (登録番号 2,453,920) を登録する出願を行い、この商標は2001 年 5 月 22 日に登録された。また、IMO の商標は、WIPOにより2011年 6 月 7 日に国際登録 (国際登録番号 1030954)され、この商標は、オーストラリア、ベネルクス、カナダ、クロアチア、エジプト、欧州連合、イスラエル、日本、モナコ、シンガポール、南アフリカ、スイス、英国などの法域で登録されている。

これに対して、被申立人が本件ドメイン名を登録したのは、上記の商標登録よりも後の2014 年 9 月 25 日である。

さらに、既述の通り、申立人は、被申立人が本件ドメイン名を使用して生々しく卑猥な画像を使用してポルノおよび性的な製品を現在および過去に販売していたと主張しているのに対して、被申立人はこれを覆す主張していないことから、この事実があったと認定することができる。そして、この事実は、悪意によるドメイン名の登録かつ使用であるとの証拠となるとされている方針第4段(b)(iv)に該当する。

以上のことから、本件ドメイン名は、不正の目的で登録かつ使用されているというべきであり、方針第4段(a)項(iii)の要件を具備する。

7. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは本件ドメイン名<imo.pw>を申立人へ移転することを命じる。

道垣内 正人
Masato Dogauchi
パネリスト
日付: 2015年3月12日