WIPO

WIPO 仲裁調停センター

紛争処理パネル裁定

株式会社レオパレス21 対 ヨネクラ ヤスヒロ、VALUE-DOMAIN COM

事件番号 D2008 - 1608

Also Available in PDF Format: D2008-1608

1. 紛争当事者

申立人:

株式会社レオパレス21、東京、日本

申立人の代理人:

弁護士法人淀屋橋・山上合同、日本

被申立人:

ヨネクラ ヤスヒロ、岐阜県岐阜市、日本

VALUE-DOMAIN COM、大阪府大阪市、日本

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名:<leopalace21.net >

本件ドメイン名の登録機関:eNom, Inc.

3. 手続の経過

本件申立書は、2008年10月24日にWIPO仲裁調停センター(以下、「センター」)に日本語により、被申立人をヨネクラ ヤスヒロとして提出された。センターは同年10月22日に電子メールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関eNom, Inc.に要請した。同年10月22日にeNom, Inc.は電子メールによりセンターへ登録確認の返答をし、申立書に記載された被申立人および連絡先細目と異なる情報を当該ドメイン名の登録者として通知し、ドメイン名の登録合意書の言語が英語であることを明示した。2008年10月27日にセンターは英語および日本語により、申立人へ登録機関により通知されたドメイン名登録者および連絡先細目を通知した。また、同日にセンターは申立人、および被申立人の両当事者に手続言語に関する通知を送付した。

2008年10月25日に、被申立人は英語により、「I do not understand English.(中略)Could you correspond in Japanese?」という応答を電子メールによりセンターへ送付した。また、同日に被申立人は英語により次の電子メールをセンターへ送付した。

「In the area where web address "http://leopalace21.net" is allocated, the Web site of the name of "Leopalace21 indictment site" is and there is management.

The visitor never misunderstands it because there is a character of "indictment".

Moreover, it is described clearly in top page, "To indict the problem of the Leopalace21 company, this Web site was established".」

さらに被申立人は、2008年10月27日にセンターへ電子メールを日本語により送付し、個人情報をインターネット上に公開することはリスクが伴うという理由からドメイン名を取得した業者の名前を代わりに登録者としたと説明し、WhoIsの情報を変更する必要があるか否かを尋ねた。

 

申立人は、2008年10月28日、センター宛に、「手続言語についての申請書」を提出して、本件紛争処理手続の言語を日本語とすることを申請した。また、申立人は、同年10月28日、センターに「申立書補正書」を提出して、被申立人を「VALUE-DOMAIN COM」とした。

センターは申立書、および補正書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則 (以下、「補則」) における方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条(a)項および第4条(a)項に従い、センターは本件申立を被申立人に通知し、2008年11月3日に紛争処理手続が日本語により開始された。手続規則第5条(a)項に従い、答弁書の提出期限は同年11月23日とされた。被申立人は、期日までに正式な答弁書を提出しなかった。したがって、センターは被申立人の懈怠を2008年11月27日に通知した。

センターは、2008年12月9日、本件について土井輝生を単独のパネリストに指名した。紛争処理パネルは、同紛争処理パネルが正当に構成されたことを確認した。同紛争処理パネルは、手続規則第7条に従い、センターへ紛争処理パネル承諾書および公平と独立の宣言書を提出した。

4. 背景となる事実

申立人は、申立書のV 「事実に関する根拠および法的根拠」において、本件ドメイン名が「ドメイン名紛争統一処理方針」の第4条(a)項(i)、(ii)および(iii)項に定める要件を充足していることを述べるにとどまリ、背景となる事実については記載していない。 しかし、申立書A項において、本件ドメイン名が申立人の商号および登録商標と同一であるという主張について注記される付録3の1「履歴事項全部証明書」(平成20年10月6日東京法務局中野出張所登記官作成)を見ると、申立人株式会社レオパレス21は、昭和48年8月17日に設立された株式会社であって、平成12年7月1日にその商号を「株式会社レオパレス二十一」に変更し、さらに、平成18年6月29日に現在の商号に変更し、同年7月3日にこれを登記したことがわかる。その営業内容については、上記証明書の「目的」欄に、「1.不動産の売買、仲介、斡旋、賃貸、管理」に始まる31項目が掲げられている(平成20年7月3日登記)。

本件申立書のVのA項において注記される付録3の2及び付録3の3には、それぞれ、日本における登録番号第4978963号の商標登録証および登録番号第4978964号の商標登録証の写しが添付されている。登録番号第4978963号の商標登録証は、平成17年9月29日に出願され、平成18年8月18日に登録され、「Leopalace21」の最初の「L」の上端と下右端を切竹デザインにし、全文字を HGPゴシック書体で表わした商標で、第6類「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金、建築用又は構築用の金属製専用材料、金属製建造物組立てセット、金属製貯蔵槽類、金属製金具、ワイヤロープ、金網、金属製包装用容器、金属製のネームプレート及び標札」その他別紙記載の(第6類、9類、11類、16類、19類、21類、35類、36類、37類、38類、39類、41類、42類、43類、44類及び45類に掲げられる)商品及び役務を指定する。付録3の3に掲げる商標登録証(登録第4978964号)は、「レオパレス21」を標準文字で横書きした商標の登録証で、第6類、9類、11類、16類、19類、21類、35類、36類、37類、38類、39類、41類、42類、43類、44類及び45類に掲げられる商品及び役務を指定する。商標登録出願及び登録の年月日は、登録第4978963号と同じである。

当該ドメイン名<leopalace21.net>は2008年2月2日に登録された。

5. 当事者の主張

A. 申立人

申立人は、処理方針第4条(i)項に従い、当紛争処理パネルに対して、本件ドメイン名<leopalace21.net>を申立人に移転することを命じる裁定を求め、その理由として次のように主張する:

1. 被申立人のドメイン名は、申立人が有する商標および役務商標(サービスマーク)に同一または混同させるような類似性を有している(処理方針第4条(a)項(i)、 手続規則第3条(b)項(viii)、(b)項(ix)(1)):

当該ドメイン名<leopalace21.net>は、申立人の商号および登録商標と同一である。(付録3の1~3)

2. 被申立人は、当該ドメイン名について権利または正当な利益を有しない(処理方針第4条(a)項(ii)、 手続規則第3条(b)項(ix)(2)):

当該ドメインでは専ら申立人の信用を毀損する情報が掲示されており、申立人の信用を毀損する目的で当該ドメインが使用されていること(不正競争防止法第2条1項12号に該当する行為)が認められる(付録4の1~2)。したがって、被申立人は、当該ドメインについて権利または正当な利益を有しないものである。

3. 当該ドメイン名は、不正の目的で登録かつ使用されている(処理方針第4条(a)項(iii)、 (b)項、手続規則第3条(b)項(ix)(3)):

被申立人は、申立人の信用を毀損し、申立人の事業を混乱させる目的で当該ドメインは使用されており、当該ドメインは、不正の目的で登録かつ使用されているものである。

B. 被申立人

被申立人は、本件申立に対して、上記に記載した電子メールによる応答の他には正

式な答弁書を提出しなかった。

6. 審理および事実認定

処理方針第4条(a)項は、申立人に対し、本件ドメイン名が次の要件をすべて充たしていることの立証を求めている:

(1) 被申立人が登録したドメイン名が、申立人が権利を有する商標または役務標章(サービスマーク)と同一であるか、または混同を生じさせるほど類似していること。 かつ、

(2) 被申立人が、当該ドメイン名について権利または正当な利益を有しないこと。かつ、

(3) 当該ドメイン名が、不正の目的で登録され、かつ使用されていること。

被申立人は、所定の期日までに答弁書を提出しなかったため、申立人が申立書において主張する事実を争わない。したがって、当紛争処理パネルは、申立人が主張し立証する事実に基づき、本件ドメイン名<leopalace21.net>が上記の要件を充足しているか否かについて審理する。

A. 手続言語について

本件ドメイン名の登録機関によると、本件ドメイン名の登録合意書の言語は英語である。したがって、手続規則第11条(a)項に従い、本件紛争手続は英語で行われるべきである。ただし、同条は、パネルが手続実施の状況を考慮し、職権によって異なる決定をすることを妨げない、と定めている。

申立人は、上記3.に記載したとおり、本件手続を日本語とする申請を行った。同じく被申立人は上記3.の通り、英語による応答により手続言語を日本語とする希望を明示し、その後、日本語による電子メールをセンターへ送付した。

以上を踏まえ、両当事者が日本に在住していること、また日本語を理解することに問題がないことから、当紛争処理パネルは本件紛争の裁定の言語を日本語とする。

B. 同一であるか、または混同を生じさせるほど類似していること

申立人は、「当該ドメイン名<leopalace21.net>は、申立人の商号および登録商標と同一である」と主張する。付録3の1に掲げる申立人株式会社レオパレスに関する「履歴事項全部証明書」に記載される申立人の商号「株式会社レオパレス21」ならびに付録3の2の商標登録証に掲げる「Leopalace21」および付録3の3の商標登録証に掲げる「レオパレス21」と比較すると、商標法の立場から、つぎのように分析し、本件ドメイン名の「同一であるか、又は混同を生じさせるほど類似している」要素を確認することができる。

本件ドメイン名<leopalace21.net>からトップレベル・ドメインを表わす接尾語「net」を除いたあとの要部である「leopalace21」は、申立人が権利を有する登録商標「Leopalace21」(登録第4978963号)と外観において同じ文字の組み合わせである点で同一であり、称呼において同一であり、かつ観念においても、同一である。本件ドメイン名の要部「leopalace21」は、申立人の登録商標「Leopalace21」の最初の文字「L」が小文字の「l」になっているだけである。

したがって、申立人は処理方針第4条(a)項(i)における要件を充たしていることを立証した。

C. 権利または正当な利益を有しないこと

申立人は、申立書に添付した付録4の1および4の2について、当該ドメイン名のウェブサイトの内容が「Leopalace21.net~レオパレス21告発サイト」であり、申立人の営業を誹謗しその信用を毀損するような記述があることを理由に、被申立人による本件ドメイン名の使用は不正競争防止法2条1項12号に定めるドメイン名に関する不正競争行為であるから、被申立人は「当該ドメインについて権利又は正当な利益を有しない」と主張する。

申立人は、被申立人が紛争中のドメイン名について権利または正当な利益を有していないことを一応立証しなければならない。しかしながら、そのような事実を申立人が証明するのは困難であり、一旦そのような主張が一応立証されると、被申立人が権利または正当な利益について立証する義務を負うことになる(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions2.1.)。

被申立人の2008年10月25日の電子メールには被申立人の権利または正当な利益を立証するような情報はなく、また被申立人は正式な答弁書を提出しなかった。したがって、紛争処理パネルは、申立人は、被申立人が当該ドメイン名について権利または正当な利益を有していないとする主張を一応立証したものと認定する。

付録4の1によると、当該ドメイン名のウェブサイトは、「レオパレスオーナーの危険性」について記述しており、告発サイト、すなわち申立人を批判、あるいは誹謗する内容であると見受けられる。申立人が「株式会社レオパレス21」の商号のもとで、この商号の文字をそのまま用いた商標「Leopalace21」および「レオパレス21」の商標登録を受けて営業を行っていることにかんがみ、被申立人が申立人から商標を利用する許諾を受けたとするような証拠はなく、申立人の営業の出所を表示する識別力のある「Leopalace21」文字標章をドメイン名として登録する権利や正当な利益は有していない。

以上、下記Dで述べることとの関連において、申立人は処理方針第4条(a)項(ii)に定める要件を充たしていることを立証した。

D. 不正の目的で(悪意で)登録され、使用されていること:

被申立人が、申立人の上記商号および登録商標とまったく同じ文字の組み合わせである「leopalace21」をドメイン名として登録すること自体、申立人の営業活動の存在を知りながら、すなわち悪意で(in bad faith)そうしたと認定せざるをえない。事実、本件申立書に添付される付録4の1および4の2は、本件ドメイン名が申立人の事業活動を誹謗しまたは阻害する目的で使用されていることの証拠であると判断される。不正競争防止法2条1項の「不正競争」の定義には、12号に「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものを言う。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」が掲げられている。申立書のVのB項では、「申立人の信用を毀損する目的で被申立人が当該ドメインを使用していること」が不正競争防止法2条1項12号に該当する行為と記載されている。

ドメイン名紛争処理においても、批判の目的を含む、何かを表現する目的で使用されるウェブサイトについて、そのような表現の自由(「Free Speech」)は申立人の「登録商標と同一、あるいは混同を生じさせるほど類似したドメイン名を登録する権利を正当化するものではない」と理解されている(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions、2.4.)。

また、紛争処理方針第4条(b)項はドメイン名の登録かつ使用が不正の目的、すなわち悪意(in bad faith)でされていることの証拠を非限定的に列挙している。本件において被申立人は申立人の登録商標と同一のドメイン名を使用していることから、当紛争処理パネルは、この行為が申立人の事業を混乱させることを主たる目的として、そのドメイン名を登録したと判断する。

したがって、申立人は処理方針第4条(a)項(iii)における要件を立証した。

7. 裁定

以上述べた理由から、当紛争処理パネルは、処理方針4条(i)項および手続規則15条に基づき、申立人の請求を認容し、本件ドメイン名<leopalace21.net>の登録を申立人株式会社レオパレス21へ移転することを命じる。


土井輝生
パネリスト

2008年12月23日