WIPO

 

WIPO Arbitration and Mediation Center

 

ADMINISTRATIVE PANEL DECISION

WIPO 仲裁調停センター

紛争処理パネル裁定

Moncler Maison S.p.A. 対Value Domain - Digirock Inc.

事件番号 D2008-0607

1. 紛争当事者

申立人

氏名(名称): Moncler Maison S.p.A.(モンクレール メゾン  エス・ピー・エー

旧名 Moncler S.p.A. モンクレール  エス・ピー・エー) ミラノ、イタリア

代理人:  Studio Legale Jacobacci e Associati、トリノ、イタリア

被申立人

氏名(名称) :Value Domain、Digirock Inc.、(株式会社デジロック)、大阪市、

 日本

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名(以下、「本件ドメイン名」):<moncler.biz >

本件ドメイン名の登録機関:Key-Systems GmbH dba domaindiscount24.com 

3. 手続の経過

本件申立書は、2008年4月18日にメールによりWIPO仲裁調停センター(以下、「センター」)へ提出された。センターは2008年4月18日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関Key-Systems GmbH dba domaindiscount24.comに要請した。2008年4月21日に同登録機関はメールによりセンターへ登録確認の返答をし、被申立人がドメイン名登録者であることを確認し、その連絡先細目を通知した。

2008年4月27日に被申立人Digirock Inc.より次の趣旨の電子メールが英語によりセンターへ送付された。

「ドメイン名<moncler.biz>は私たちのクライアントのものです。クライアントには紛争申立てがあったことを通知しました。返答を待っていましたが、まだ連絡がありません。私共は、クライアントがドメイン名をリリースすると考えています。」

センターは申立人に和解の可能性を説明する電子メールを2008年4月29日に英語により送付した。同日に申立人は次のメールを英語によりセンターへ送付した。

「私たちはドメイン名保持者に何度も連絡をとりましたが、返答があったことはありません。したがって、私たちは紛争処理手続きの中断は行いません。」

本ドメイン名登録合意の言語は日本語であり、統一ドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」)第11条により、日本語が本紛争処理手続き言語である。申立書は英語により提出されたため、センターは2008年4月30日に手続言語について申立人に通知を行った。申立人は2008年5月15日に申立書の日本語による翻訳を提出した。

センターは申立書が、処理方針、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則 (以下、「補則」)における方式要件を充足していることを確認した。

「手続規則」第2条(a)項および第4条(a)項に従い、センターは本件申立を被申立人に通知し、2008年5月28日に紛争処理手続が開始された。「手続規則」第5条(a)項に従い、答弁書の提出期限は2008年6月17日であったが、被申立人は答弁書を提出しなかった。センターは被申立人の義務の不履行を2008年6月18日に通知した。

センターは、本件について2008年6月27日に北川善太郎を単独のパネリストとして指名した。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。「手続規則」第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

4. 背景となる事実

申立人はスポーツウエアの分野における代表的なイタリアの会社であり、世界各国において「MONCLER」の商標登録がされている。国際登録番号269298(1963年5月11日)、米国登録番号803943(1966年2月15日)、日本国登録番号4142378(1998年5月1日)他多数(添付資料2~5)。申立人の会社は、1952年、フランスに於いて設立されて以来、50年以上にわたりグローバルにその事業を展開している(添付資料1&6)。

5. 当事者の主張

5.1 申立人の主張

申立人の主張は以下の通りである。

まず、申立人は、登録者である被申立人の本件ドメイン名<moncler.biz>が申立人の商標「MONCLER」およびその商号「MONCLER」と同一であることを主張する(「処理方針」第4条(a)項(i);「手続規則」第 3条(b)項(viii), (b)項(ix)(1))。

つぎに、被申立人は申立人とビジネス上一切の関係がなく、被申立人の通常のビジネスにおいて、本件ドメイン名もMONCLERの商標も商号も被申立人のものとして一般には知られていない。また被申立人にはビジネス以外においても本件ドメイン名の正当な使用例がないことから、登録者がその本件ドメイン名についての権利又は正当な利益を有していないことを主張する(「処理方針」第4条(a)項(ii);「手続規則」第 3条(b)項(ix)(2))。

さらに、被申立人が申立人の商標の周知性を認識していたと推測できるのでいわゆる「便乗的悪意」(opportunistic bad faith)が認められることから、登録者の本件ドメイン名が、悪意で登録、使用されていること(「処理方針」第 4条(a)項(iii)、 第4条(b)項;「手続規則」第3条(b)項(ix)(3))を主張する 。

以上の理由により、申立人は「処理方針」第4条(i)に従い、この紛争処理手続において選任されたパネルが、紛争の対象である本件ドメイン名を被申立人から申立人に移転する裁定を求める。

5.2 被申立人の主張

被申立人は、期日までに申立書に対して応答しなかったので、2008年6月18日に、被申立人に対してその義務の不履行が通知された。その後、被申立人から文書の提出はなかった。

6. 審理および事実認定

本申立書の対象である本件ドメイン名が登録されるに際して適用された登録合意書は、「処理方針」を組み込んでいるので、本件紛争は「処理方針」の対象範囲内であり、したがって、本パネルは本件申立を「処理方針」に従って裁定する権限をもつ。さらに、申立人は、「処理方針」第4条(a)項所定の3つの要件、すなわち、(1)本件ドメイン名は、申立人が権利を有する商標または役務商標と同一または混同させるような類似性を有するものであること、(2)被申立人は本件ドメイン名に関して何らの権利または正当な利益を有していないこと、および(3)本件ドメイン名が悪意で(in bad faith)登 録かつ使用されていること、を主張している。従って被申立人は「処理方針」の定める紛争処理手続に服する義務を負う。

以下、申立人の主張する「処理方針」第4条(a)項所定の3つの要件が充足されているかを個別に検討する。 

(1) 同一性または混同させるような類似性

申立人は、被申立人である登録者の本件ドメイン名<moncler.biz>が、申立人が権利を有する商標「MONCLER」と同一であること(処理方針第4条(a)項(i); 手続規則第 3条(b)項(viii), (b)項(ix)(1))を主張する。

本ドメイン名<moncler.biz>は、申立人の商標「MONCLER」と同一であることは、ドメイン紛争処理の判定において、大文字か小文字かの区別は問われないこと、また、トップレベルドメインの「.biz」は商標との同一性の判断において考慮しなくてよいこと、から明らかである。

以上により、申立人は処理方針第4条(a)項の1つ目の要件を充足した。

(2) 権利もしくは正当な利益の欠如

申立人は、登録者である被申立人が本件ドメイン名についての権利又は正当な利益を有していないこと(処理方針第4条(a)項(ii); 手続規則第3条(b)項(ix)(2))を主張する。

本ドメイン名の登録者である被申立人は申立人とは何ら関係ない当事者であり、申立人は登録者に対して過去、現在において自己の商標の使用を許諾したことはない。それに加えて、被申立人である登録者が「MONCLER」の商標権も商号権も取得していないことから、被申立人は本件ドメイン名について権利又は正当な利益を有していないと判断する。

以上により、申立人は処理方針第4条(a)項の2つ目の要件を充足した。

(3) 悪意による登録と使用

申立人は被申立人である登録者の本件ドメイン名が、悪意で登録かつ使用されていること(処理方針第4条(a)項(iii), 第4条(b)項; 手続規則第 3条(b)項(ix)(3))を主張する。

申立人の商標「MONCLER」は世界的によく知られた商標であり、申立書の添付資料にあるように雑誌における紹介から判断してもそのことが認められる。それに対して、被申立人Value Domain、Digirock Inc.(株式会社デジロック)は、そのウエブサイトからみるかぎり、「Value Domain」という名称のドメイン登録代行事業、ウエブページに関するサービス事業、ドメインのオークション事業を営んでいるが、商標「MONCLER」もドメイン名<moncler.biz>もその事業とのかかわりがみられない。

提出された証拠によると本件ドメイン名はモンクレールに関する情報を掲載している。さらに、本件ドメイン名は、グーグルによる検索連動型広告をなお利用している。

したがって、本件は被申立人の便乗的悪意に該当する事例である。経験則にてらして被申立人は、申立人のよく知られた商標である「MONCLER」を知って本件ドメイン名の登録申請を行ったものと推測することができる。そうでないことは被申立人が主張するべきである。本件においては被申立人の議務の不履行があり、被申立人のこの点に対する主張がなかった。したがって、申立人の主張通り、登録者である被申立人は「MONCLER」が申立人の商標であることを知りながら、本件ドメイン名を悪意で登録し、現在も使用しているものと認めることができる。このような状況を踏まえ、紛争処理パネルは申立人によるこの点に関する主張を妥当なものと受け入れる。

以上により、申立人は処理方針第4条(a)項の3つ目の要件を充足した。

以上認定の通り、本件ドメイン名の紛争処理に関して、被申立人が取得した本件ドメイン名は、申立人に移転するのが相当である。

7. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは当該ドメイン名<moncler.biz>を申立人へ移転することを命じる。


北川善太郎
パネリスト

日付: 2008年7月10日